データセンターには空調機が付きものだ。空気の流路を工夫し、空調機の効率を高めることで、消費電力を大幅に削減できる――東芝など4社が開発した新型空調機の特徴だ。
データセンターの需要が高まる中、サーバの高密度配置や高負荷に耐えられる空調機はまさに縁の下の力持ちだ。このような空調機に求められている性能は、より少ない消費電力で冷却性能を維持することだ*1)。
*1) データ処理以外の消費電力の多寡を示す指標PUE(Power Usage Effectiveness)は空調性能を評価する目安となる。PUEは、施設全体の消費電力をデータ処理(ICT機器)の消費電力で割った形をしている。PUEの値はかならず1よりも大きいが、1に近いほど、効率的な空調が実現できていることが分かる。
関電エネルギーソリューションと高砂熱学工業、東芝、東芝キヤリアの4社は、消費電力を約3分の1に低減し、効率を高めた新型空調機「前面吹き出しタイプ高効率空冷パッケージ空調機」を開発した(図1)。既に3社のソリューション*2)に適用済みであり、2013年5月から販売を開始する。
*2) 関電エネルギーソリューションのデータセンター空調システム「Muro brezza ムーロブレッザ」と高砂熱学工業のデータセンター空調システム「IDC-SFLOW アイデーシーエスフロー」、東芝の「モジュール型データセンター」である。
現在、多くのデータセンターでは、本来の床の上部にフリーアクセスフロアと呼ぶ上げ底に似た床を作り込み、ケーブル配線の配置などに利用している。
空調機が放出する冷たい空気をフリーアクセスフロア経由でサーバに送る床下空調も広く使われている。しかし、4社によれば、床下空調では空気の流れに圧力損失が生じる。開発品ではフリーアクセスフロアを使わず、空気を背面から吸い込み、前面に吹き出す方式を採った。これにより、サーバ室へ直接空気を送ることになり、屋内空調ユニットの空気搬送動力(消費電力)を抑えることができたという。
加えて、空調機供給温度を上げることで、冷却能力当たりの消費電力を引き下げることも可能だ。サーバ室へ直接送風する場合に利用できる。特定の条件下*3)では、COP(Coefficient Of Performance)の値を7.4まで高めることができるという。
*3) COP=冷却能力(kW)/消費電力(kW)。屋内機吸込空気乾球温度35℃、湿球温度21.5℃、屋外機吸込空気温度16.4℃、負荷率75%などの条件を満たしたときの数値。
今後は、外気が低温時には圧縮機(コンプレッサ)を停止し、さらに高効率な空調を可能にする機能を備えた機種を追加していく。具体的には冷凍機用冷却水の放熱に利用する冷却塔(クーリングタワー)を用いて、冬期やその前後の時期に冷却水を利用して冷却する。いわゆる間接外気冷房の一種だ。
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