高速道路は電気自動車に任せろ、ワイヤレス充電も可能電気自動車

中日本地域の高速道路などを管理運営する中日本高速道路は、6つの団体と協力して高速道路における電気自動車とワイヤレス充電についての研究を進めている。高速道路維持管理用として日本初の電気自動車の開発に成功しており、2013年秋からは実際の高速道路での実証実験を開始する。

» 2013年07月04日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 自走式標識車。出典:中日本高速道路

 高速道路を走る維持管理用の黄色い大型車両はよく目立つ(図1)。図1に示した自走式標識車は工事規制の際によく使われる。車体から立ち上がった電光掲示板を使って規制箇所を表示したり、注意を促したりする車両だ。

 中日本高速道路(NEXCO中日本)は、新型の自走式標識車を開発した。開発した車両は電気自動車であり、ワイヤレス充電(無線給電)も可能というもの。国内初の車両である。まずテストコースでの走行試験を進めた後、2013年秋から実際の高速道路上で実証実験を開始する。車体は三菱ふそうトラック・バスが2013年6月27日に発表した小型電気トラック「キャンター E-CELL」を使用する(図2)。図2で青く写っているワイヤレス充電装置を使う他、普通充電やCHAdeMO方式の急速充電が可能なトラックだ。容量約70kWhのリチウムイオン蓄電池を搭載し、航続距離は100km以上を目指す。

図2 小型電気トラック「キャンター E-CELL」。全長6635mm。出典:三菱ふそうトラック・バス

 中日本高速道路が研究を開始したのは2012年11月であり、半年で早くも成果が出た形だ。今回の「維持管理用車両のEV化に関する研究」は、中日本高速道路が6つの団体と共同で進めているものだ。高速道路総合技術研究所、昭和飛行機工業、東京大学、中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京、長野日本無線、三菱ふそうトラック・バスとの共同研究である。

ワイヤレス充電では最新の方式を採用

 ケーブルを使わず、ワイヤレスで充電する技術は大きく2つに分かれる。電磁誘導方式と磁界共鳴方式だ(図3)。電磁誘導方式は家電などさまざまな分野で既に実用化されており、100kW級の電力を送受信可能だ。ただし、送受信距離が15cm程度と短い他、送信コイルと受信コイルの位置合わせがずれると効率が低下するという欠点がある。図2の左にある例では、車体後部のすぐ後ろの路上に白い送信用のモジュールが写っている。欠点を解消するため、一般に、コイルを能動的に動かすなどの技術開発が進んでいる。

図3 2種類のワイヤレス充電方式。出典:昭和飛行機工業(左)と長野日本無線(右)

 磁界共鳴方式は2006年のマサチューセッツ工科大学(MIT)の発表以降、研究が進んだ新しい方式だ。国内ではトヨタ自動車や三菱自動車、IHIなどが同方式の技術開発を進めている。現時点では出力が1〜3kWと少ないものの、コイルの位置ずれの問題が出にくいというメリットがある。例えばコイルが平行からずれても効率がほとんど低下しない。送受信距離も電磁誘導方式より大きく、数十cm取ることが可能だ。このため、走行中給電につながる技術だと考えられている。中日本高速道路が今回採用したのは磁界共鳴方式だ。高速道路を担う企業自らが開発を進めることで、走行中給電に関する研究が進むことが期待できる。

 ただし、同社はワイヤレス充電の技術を磁界共鳴方式一本に絞ったわけではない。2015年には電磁誘導方式を採用した試作機も導入する計画だ。

テーマ別記事一覧

 電気自動車 


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.