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» 2013年10月26日 01時00分 公開

ウイークエンドQuiz:「雪」のエネルギーは何に役立つ? (3/3)

[畑陽一郎,スマートジャパン]
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国内の利用状況は?

 北海道経済産業局は、全国9の道県(北海道、青森県、岩手県、秋田県、山形県、福島県、新潟県、岐阜県、鳥取県)における144カ所の雪氷熱の利用事例をまとめている。うち北海道が68カ所を占めており、最多だ。氷を利用した設備は北海道だけにあり、68カ所のうち18カ所を占める。

 事例のうち規模が大きなトップ3は、北海道千歳市の「雪山方式冷熱供給システム」(雪量7万4400トン)、北海道沼田町の「沼田式雪山センター」(雪量1万トン)、新潟県魚沼市の「雪利用漬物生産加工施設」(雪量5000トン)である。

 千歳市の設備は、2010年に完成した。東京航空局新千歳空港事務所とセントラルリーシングシステムが事業を運営している。100m×200m×2mという巨大な屋外の貯雪ピットに、空港内で除雪した雪を雪山として保存しておく。夏季に熱交換器を通じて空港ターミナルビルの冷房に利用する形だ。セントラルリーシングシステムによれば、5月から9月までの5カ月間利用することにより、原油換算目標値で年間430kL〜860kLのエネルギーを削減できるという*1)

 沼田町には9カ所も施設が集中している。新潟県上越市に次いで施設が多い。沼田式雪山センターは2007年に完成した1890m2の屋外スペースに雪を貯蔵し、必要に応じてセンター外に雪を供給する基地だ。センター内では雪を利用しない。

 魚沼市の設備はゆきくらフーズが1997年に設置したもの。貯蔵庫の直上に雪をかぶせて断熱シートで覆い、ぬか漬け用野菜を低温に保っている。貯蔵庫の面積は154m2ある。

*1) 同設備の目的はもう1つある。除雪した防除雪氷剤や凍結防止剤が付着した雪が河川に与える影響、つまり生物化学的酸素要求量(BOD)値の上昇を防ぐことだ。

先進事例にはどのようなものがある?

 クイズの選択肢のうち、雪氷熱を使っていないものを探しだそう。「a. 氷室」の例は、魚沼市の施設が該当する。「b. マンション冷房」はどうだろうか。

 北海道美唄(びばい)市に答えがある。永桶が運営する賃貸マンション「ウエストパレス」は1999年に完成し、2002年度新エネ大賞「資源エネルギー庁長官賞」を受賞した世界初の雪冷房マンションだ。雪を100トン蓄えられる貯雪庫を設置し、その下部に雪解け水を蓄えるタンクがある。この水をエアコンの室外機に相当する熱交換器に通す。室外機と室内機の間は不凍液が循環しており、室内機から冷風が出てくる仕組みだ。室外機を通過した水は温水となって雪に注ぐことで雪解け水を増やす。延面積約600m2の空間に冷房を供給する能力があり、エアコン冷房に比べて電気料金を約3分の1に引き下げることが可能だ。約10年で設備回収ができる計算だという。

 「d. 米貯蔵庫」の実例も美唄市にある。美唄市農業協同組合が運営する米殻零温貯蔵施設「雪蔵工房」は、雪を3600トン使う施設だ。1500トンの玄米を貯蔵できる4つの貯蔵庫を備えており、貯雪庫とはファンを組み込んだ冷風循環系を通じてつながっている。玄米を出庫するときに、外気と庫内の温度差が大きくならないよう、5度、10度、15度と段階的に昇温できる仕組みも取り込んだ。完成したのは2000年だ。

 「e. 温室」は、北海道浦臼町にある。神内ファーム21が運営する「プラントファクトリー・マンゴーハウス」だ。氷冷熱で栽培した冬採りマンゴーを売り物にしている。プラントファクトリー・マンゴーハウスは今回紹介した事例の中で唯一、氷の冷熱を使う。

 同設備は3つの部分に分かれている。プラントファクトリー側の2つの部分は2001年に完成し、マンゴーハウス側は2008年から利用が始まった。プラントファクトリーには1000トンの氷を使う季節間蓄熱空調システムと、やはり1000トンの氷を使うアイスシェルターがある。季節間蓄熱空調システムでは、−2度以下の外気を冷水に当てて氷を作っておく。夏季には氷が溶け出した冷水を空調機に通じる。空調機からは20度の「冷風」が温室に出て行き、温室内の過熱を防ぐ。アイスシェルターはもう少し単純な仕組みだ。氷室にファンを使って空気を通じて冷却し、野菜の貯蔵に使う。マンゴーハウス側にも季節間蓄熱空調システムが導入されており、約370トンの氷を貯蔵して利用する。

雪氷熱の利用方法は3種類

 紹介した雪氷熱の利用方法は、3種類に分けることができる(図3)。

図3 雪氷熱を利用する方式。出典:資源エネルギー庁

 最も単純なのが、雪や氷から滑り下りてくる冷気をそのまま使う「自然対流方式」だ。魚沼市の事例が代表であり、伝統的な氷室に相当する。図3ではこの方式は描かれていない。

 送風機の動力を使って、雪や氷に当たった冷たい空気を必要な場所まで送り込むのが「直接熱交換冷風循環方式(全空気方式雪冷房)」だ。美唄市の雪蔵工房が相当する。図3で(I)となっている部分がこの方式の動作を示している。

 冷水をポンプを使って循環させる系と、室内の系、独立した2つの系を熱交換器で結び付けたのが、「熱交換冷水循環方式(冷水循環式雪冷房)」だ。千歳市の事例や浦臼町の事例がこれだ。図3の(II)である。

 以上のように、金属の精錬など高温が必要な用途には雪氷熱は向かない。用途として誤っているもの、今回のクイズの正解は「c. アルミ精錬」だ。

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