カナダのシェールガスを福島へ、LNGの受入基地が2018年に操業開始電力供給サービス

火力発電用を含めて需要が急増しているLNG(液化天然ガス)の新しい受入基地が福島県の相馬港に誕生する。政府系の石油資源開発が2018年3月の操業を目指して建設する計画だ。カナダのシェールガス田から年間120万トンにのぼるLNGを輸入して、電力用と都市ガス用に供給する。

» 2013年11月29日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 LNGの受入基地を建設する場所は相馬港の「4号埠頭」で、現在は使われていない区域である(図1)。20万平方メートルの広さの土地に、LNGの貯槽タンクや大型船舶用のバース(停泊施設)などを建設する(図2)。港と内陸部を結ぶ40キロメートルのパイプラインを含めて、総工費は約600億円を見込んでいる。

図1 「相馬LNG受入基地」の建設予定区域。出典:石油資源開発
図2 LNG受入基地の完成イメージ。出典:石油資源開発

 事業主体になる石油資源開発(JAPEX)は石油とガスの探鉱・開発・生産・販売を手がける民間企業だが、3分の1を政府が出資している。近年はLNGを中心に国内の天然ガス供給体制の構築に力を入れていて、北海道から日本海側の東北・北陸地方にかけてLNGのパイプライン網を拡大中だ。

 新潟−仙台間には本州を横断するパイプラインがあり、相馬港に建設するLNG受入基地と直結する予定である。新しい受入基地とパイプラインが完成すると、太平洋側と日本海側の双方向から天然ガスを送ることが可能になり、大規模な災害が発生した場合でも天然ガスの供給を継続しやすくなる。

 相馬港の受入基地にはカナダ産のシェールガスを液化して輸入する予定だ(図3)。JAPEXはカナダの西部で進められているシェールガス田の開発プロジェクトに参画して、生産量の10%に相当する年間120万トンのLNGを引き取る権利を保有している。

図3 LNGの輸送網。出典:石油資源開発

 国内ではLNGの販売量が年々増加して、2011年度には約8000万トンが販売された(図4)。そのうちの3分の2が電力用で、残りの3分の1が都市ガス用である。相馬港の受入基地でカナダから輸入する120万トンは全体の1.5%に相当する。

図4 電力用と都市ガス用のLNG販売量。出典:資源エネルギー庁

 JAPEXは天然ガスの供給にとどまらず、受入基地の用地と施設を活用して火力発電事業も検討する。実績のある発電事業者と連携をとりながら、今後の増加が見込める電力会社の電源入札に参加することを想定している。原子力発電所の事故によって大きな被害を受けた福島県内にLNGを中核にした新しいエネルギー産業を起こして、大震災からの復興に生かす考えだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.