足りない電気をお隣さんから調達、マンションの光熱費が30%減るスマートシティ(1/2 ページ)

静岡ガスはマンション内で電力の融通を可能にする「T-グリッドシステム」を開発した。各戸に設置したエネファームを制御することで、電力が不足している家庭に向けて、余裕のある家庭のエネファームが電力を供給する。東レ建設は同システムを導入したスマートタウンを静岡県東部に立ち上げ、2017年度の完成を予定する。

» 2014年02月04日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 静岡ガスはマンション内で余剰電力をやりとりする仕組み「T-グリッドシステム」を実用化する。東レ建設が2017年度に完成を予定するスマートタウンに組み込む。家庭用燃料電池システム「エネファーム」をマンションの全戸に組み込んで使う(図1)。分譲マンションとして同システムを導入する初の事例である。「今後は他の建設事業者や不動産開発事業者はもちろん、他のガス会社への技術供与も検討している」(静岡ガス)。

 「スマートタウンには主にマンション共有部で利用する太陽光発電システムと蓄電池を導入する」(東レ建設)。この他、HEMSとMEMSを導入し、T-グリッドシステムと併せて、電力と融通電力量、ガスの見える化や最適制御を試みる。

図1 各戸のエネファームが電力を融通し合う 出典:静岡ガス

光熱費が30%減る

 T-グリッドシステムの効果は大きい。静岡ガスによれば、エネファームを導入していないマンションと比較して、一次エネルギー削減率は全棟で約25%となる。これによって、二酸化炭素(CO2)の排出量を全棟で約30%削減できる。

 エネファームが電力を作り出すため、電力会社から購入する電力が約60%減る。ガスの消費量は増えるものの、エネルギーコストは約30%低減する。これが最終的な効果だ。

他の家庭のエネファームを動かす

 電力と湯を同時に作り出すことができるエネファームのようなコジェネレーションシステムのメリットはこうだ。条件次第では、都市ガスなどが持っているエネルギーを最大限に引き出すことができる。エネファームの効果が最も高くなるのは湯と電力を大量に使う家庭だ。

 逆にいえば、湯は使うが電力を使わない家庭やその逆の場合は効果を引き出しにくい。「マンションにエネファームを設置する場合に難しい理由がこれだ。そもそもどの部屋にどのような住人が生活するのかは分からないため、電力などの消費パターンを予測できず、エネファームの使い方が難しい」(静岡ガス)。

図2 低出力のエネファームが消費電力の大きな家庭へ電力を供給する 出典:静岡ガス

 T-グリッドシステムを利用した場合、どのように電力を融通できるのか、大まかな概念を示したのが図2だ。2人暮らしで消費電力の小さなBさん宅(図右)が、5人家族で消費電力の大きなAさん宅に電力を供給している。

 図3では、さらに時間帯による消費電力の増減と合わせて効果を示した。縦軸はエネファームの出力、横軸が時間だ。エネファームの最大出力(0.75kW)に相当する位置に点線(横線)を描いた。Aさん宅では7時以降と17時以降の炊事の時間に大量に電力を消費する。従来は、電力会社から電力を購入する必要があった時間帯だ。T-グリッドシステムを利用すると、これらの時間帯にあまり動作していないBさん宅のエネファームを使ってAさん宅に電力を融通できる。Aさん宅は電力会社から購入するよりも安く電気を利用できる。Bさん宅でも光熱費から電力供給分が差し引かれるため、メリットがある。

図3 消費電力のピーク値が異なる2つの家庭が電力を融通し合う 出典:静岡ガス
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