風車の大型化に伴って、発電コストも下がっていく。陸上風力の発電コストは現時点で電力1kWhあたり10〜17円の水準にあり、太陽光発電の2分の1程度で済む。石油火力と比べてもほとんど変わらない。一方で洋上風力は割高だが、これから風車の大型化が進んでいけば、2020年代には現在の欧米並みに8〜15円のレベルまで低下するだろう(図4)。
ただし風力の発電コストは気象条件によって大きく変動する。最も重要なファクターは年間を通じて安定した風が吹き続けることである。年間の発電量は平均風速に比例して大きくなることがわかっている。
一般に風力発電に適した場所は平均風速が5.5〜6メートル/秒を超える地域とされる。発電設備の効率を表す「設備利用率」で比較すると、平均風速6メートル/秒では23%になるのに対して、7メートル/秒では32%と大幅に上がる。さらに8メートル/秒になれば41%まで上昇する(図5)。同じ発電能力の設備でも、これほど年間の発電量に差が出るわけだ。
平均風速は地域によって大きく違う。陸上では北海道から本州の中央を貫く山岳地帯をはじめ、四国や九州・沖縄を含む沿岸地域で平均風速が6メートル/秒を超える。特に北海道と東北には風力発電に適した場所が広く分布している(図6)。
洋上になると日本中の近海で平均風速が6メートル/秒を超えて、どの海域でも風力発電を実施できる可能性がある。その中でも北海道から東北の北部、関東の南部、九州の南部から沖縄にかけては、8メートル/秒を上回る海域が広がっている。環境に与える影響を適正なレベルに抑えることができれば、洋上風力発電の拡大余地は極めて大きい。
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