太陽光を追って集めて発電効率2倍に、64枚の電池モジュールで7.5kW蓄電・発電機器

世界各国で太陽電池の性能競争が加速する中、住友電気工業は太陽光を追尾してレンズで集める高効率の発電システムを製品化した。標準的なシリコン系の太陽電池と比べて発電効率が約2倍になり、しかも朝から夕方まで高い出力を維持することができる。

» 2014年03月31日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 住友電気工業が製品化した集光型の太陽光発電システムは、1基あたり64枚のモジュールで構成する(図1)。太陽光の向きに合わせてモジュールの面を動かす仕組みが架台に取り付けられているため、日射量を最大限に取り込むことが可能だ。それぞれのモジュールの中にはレンズと発電素子が並んでいて、太陽光を効率よく集めて発電することができる。

図1 集光型の太陽光発電システムとモジュールの構造。出典:住友電気工業

 この製品を3月に国内で初めて導入した宮崎大学のシステムでは、2基の構成で最大15kW以上の電力を供給する(図2)。1基あたり7.5kW以上になり、標準的な住宅の屋根に設置する太陽光発電システム(出力4kW)と比べて2倍の発電能力がある。モジュールの厚さは10センチメートルで、重さは10キログラム未満になっている。

図2 宮崎大学に設置した集光型の太陽光発電システム。出典:住友電気工業

 発電素子には高温に強い化合物半導体を使っているため、日射量の多い高温・高湿の地域でも発電効率が落ちない。住友電気工業がモロッコで実施した社内実証試験では、単位面積あたりの発電効率がシリコン系の約2倍になることを確認した(図3)。太陽光を追尾するシステムの効果によって、朝や夕方の時間帯でも高い発電効率を発揮する。

図3  発電出力の比較(モロッコにおける社内実証データ)。出典:住友電気工業

 狭い用地でも多くの発電量を得られることから、これまで太陽光発電システムを導入しにくかった場所にも展開できる可能性がある。太陽光を追尾するために架台を高く設置する必要があり、駐車場や農地などにも向いている。住友電気工業が自社の横浜製作所の構内で2012年から稼働させているシステム(15基、出力100kW)では、架台の周辺のスペースに太陽光が届いている(図4)。

図4 住友電気工業の横浜製作所で稼働中のシステム。出典:住友電気工業

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