バイオマス発電: 使わずに捨てる資源から、800万世帯分の電力再生可能エネルギーの未来予測(6)(2/2 ページ)

» 2014年04月10日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
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石炭と混焼して発電コストを下げる

 バイオマス発電ではコストの半分以上を燃料費が占めるケースは珍しくない。林地の残材などを活用する木質バイオマスを例にとると、発電コストに占める燃料費の割合は63〜75%にも達する(図5)。発電設備の建設費が中心になる他の再生可能エネルギーとはコスト構造が大きく違う。

図5 バイオマス発電のコスト。出典:NEDO(資源エネルギー庁の資料をもとに作成)

 木質バイオマスは流通量の拡大に伴って、調達や加工のコストは徐々に下がっていく見込みだ。とはいえ森林から供給できる木材の量にも限界があり、現在のコストから大幅に引き下げることは難しい。

 そこで1つの解決策として注目を集めているのが、価格の安い石炭と混焼する方法である。石炭火力発電では1kWhの電力を作るために必要な燃料費は4〜5円と安く、他のコストを含めても10円以下に収まる。石炭に木質バイオマスを加えて発電すれば、低いコストのままバイオマス資源を活用することが可能になる。

 現在のところ石炭に対して1〜3%程度の木質バイオマスを混合する方法が実用化されている。わずかな混合率でも木質バイオマスの使用量としてはかなり大きくなる。例えば中国電力が島根県の「三隅発電所」(出力100万kW)で実施している混焼発電では、林地の残材を加工したチップを燃料の石炭に2%だけ混合している。

 それでも年間に利用するチップは3万トンに及び、3200万kWhの電力を木質バイオマスから作り出している計算になる。一般家庭で9000世帯分の電力使用量に相当する規模だ。すでに全国の電力会社がバイオマス混焼発電に取り組んでいて、今後さらに導入する発電所の数は増えていく(図6)。

図6 バイオマス混焼発電の実施状況。出典:電気事業連合会

「ごみ発電」で200万世帯分の電力

 木質以外のバイオマス資源も大量に残っている。特に発電に使いやすいのは食品廃棄物を主体にした生ごみだ。全国の自治体が焼却施設で生ごみを処理する時に、膨大な熱を発生する。その熱を発電に利用することができる。

 環境省の調査によると、2011年度には全国で1211カ所のごみ焼却施設が稼働していて、そのうち26%にあたる314カ所で発電設備を導入している。年間の発電量を合計すると75億kWhに達して、200万世帯分の電力使用量に相当する。今後さらに発電設備を導入する焼却施設が増えていくのは確実で、ごみの処理量に対する発電効率も上がっていく見通しだ。

 海外の状況を見ても、バイオマスエネルギーの大半は、生ごみを中心とする一般廃棄物から作られている(図7)。日本でも「ごみ発電」を拡大できる余地は大きい。かりに全国の焼却施設すべてに発電設備を導入できれば、それだけで現在の4倍にあたる800万世帯分の電力を供給できる可能性がある。

図7 主要国のバイオマスエネルギー導入量。出典:NEDO(IEAの資料をもとに作成)

 バイオマス発電の資源は大都市にも地方にも豊富に存在する。都市部では廃棄物発電のほかに、下水処理の工程で発生する汚泥からガスを生成して発電する試みが全国に広がってきた。地方では家畜の糞尿からガスを発生させて、発電や熱源として利用するプロジェクトが各地で始まっている。

 資源をガス化してから燃料に利用するバイオマス発電の場合には、建設費と運転維持費の高さが課題だが、今のところ買取価格が39円と太陽光発電よりも高く設定されているために導入メリットは十分にある。その利点を生かして発電設備が拡大していけば、長期的に大幅なコストダウンも可能だろう。

 火力発電を補完する安定した電力の供給源として、さまざまな資源を活用できるバイオマス発電の有用性は大きい。新たな循環型のエコシステム(生態系)がバイオマス発電で全国に広がっていく。

第7回:「海洋エネルギー:潮・波・海水でも発電、2050年には2200万世帯分にも」

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