230kWの太陽電池と電気自動車がダブルで支える、愛知県の企業が停電対策でエネルギー管理

自動車製造用の設備を開発・販売するシンテックホズミは、BCP(事業継続計画)の1つとして停電時の電源を確保。京セラグループ2社が開発したシステムを導入することで実現した。太陽電池の他、プラグインハイブリッド車からも電力を建物内に送ることができる。

» 2014年04月10日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 シンテックホズミ本社の位置

 停電時に備えるために太陽光発電システムを導入する、電気自動車から建物に電力を供給する――このような動きがアイデア段階から導入事例へと進み始めた。

 愛知県みよし市に本社を置くシンテックホズミは、自動車産業向けに自動搬送システムを用いた生産設備などを供給する企業(図1)。同社は緊急事態にあってもビジネスを続けられるよう、BCP(事業継続計画)を策定している。その1つが電力の供給を確保することだ。

 同社は京セラと京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が共同開発した「ソーラーサイクルステーション for EV」に着目した。このシステムはそもそも電動アシスト自転車を太陽光発電システムで充電するための製品だ。2010年11月に発売後、2012年には電気自動車(EV)向けに機能を拡張している。

 シンテックホズミの事例では同社がBCPに必要なシステムを立案し、KCCSが設計、施工を担当。ソーラーサイクルステーション for EVを一部カスタマイズして、シンテックホズミの本社に導入した。導入費用は非公開。

 ソーラーサイクルステーション for EVは太陽電池モジュールとパワーコンディショナー、接続箱、充電ステーションからなるソリューション。太陽光発電システムとして京セラの製品を導入。2014年3月には本社社屋の屋根に230kW分の多結晶シリコン太陽電池モジュールを設置した(図2)*1)

図2 社屋の屋根に設置した太陽電池モジュール 出典:京セラ

 開発したシステムの全体像を図3に示す。通常時は太陽光発電システムで発電した電力を社内の照明や動力に振り分けている。充電スタンドに社有車であるプラグインハブリッド車(PHV)を横付けして、充電を開始すると、太陽光発電システムから電力が供給される。「太陽光を利用するためのスイッチ操作などは不要だ」(京セラ)。

 停電時はどうなるのだろうか。太陽光発電システムは電力系統から独立して自立運転に移行する。いざというときに使いやすいシステムである。

図3 シンテックホズミが導入した電力システムの全体像 出典:京セラ

PHVから建物に電力を供給

 シンテックホズミのシステムが優れているのは、太陽光発電システムだけではなく、PHVが内蔵する蓄電池からも電力を取り出すことができる点だ。同社は社有車としてトヨタ自動車の「プリウスPHV」を3台導入しており、これを使う。日照が得られない状況でプリウスPHVの内蔵蓄電池の容量がなくなったとしても、PHVであるため、ガソリンを利用して発電できる。

 「図3の中央下部にソリューションをカスタマイズしたところがある。PHVに接続したケーブル(図4左)を接続箱に接続する部分(図4右)だ」(京セラ)。これにより、BCP対策室へPHVから直接電力を送ることができるようになった。BCP対策室内には、接続箱とつながった非常用コンセントを設けた。

図4 PHVから電力を取り出すケーブル(左)とそのケーブルを接続箱に接続しているところ(右) 出典:京セラ

*1) 2013年春に導入に関する本格的な検討を開始し、2013年12月末に着工したもの。出力208.4Wの太陽電池モジュールを144枚、出力242Wのモジュールを840枚設置した。

【訂正】 記事の掲載当初、第7段落にあった「PHVを充電する際にやはり切り替え操作は必要ない」(同社)」という部分に誤りがありました。停電時に太陽光発電システムからPHVに充電する機能は備えていません。詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。あわせて、本文に注1を追加しました(2014年3月14日)。

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