自動車工場が変わる――日産がカナダ企業と協力して電力を生む自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2014年04月18日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
前のページへ 1|2       

日本市場では屋根置きが伸びる

 SPNが手掛ける太陽光発電システムは全て企業や地方自治体から屋根の賃借を受けて進める形を採る。いわゆる「ルーフトップ型」だ。同社が設計・調達・建設(EPC)から管理・運営(O&M)までを一貫して扱うことが特徴。

 同社が日本国内で手掛ける事例は、日産自動車が3例目となる。静岡県富士市では2カ所の下水処理場(東部浄化センター、西部浄化センター、関連記事)を合わせて3MW、千葉県野田市では1.4MWの事例がある

 SPNの実績はカナダのオンタリオ州を中心としている。既に600カ所を超える商業・産業・公共施設の屋上で太陽光発電施設を設計、施工、運転しており、全て完成した場合の総容量は300MWだ。太陽電池モジュールの面積は300万m2に達し、これはオンタリオ州の分散電源企業として最大だという。

 「日本のルーフトップ型の市場は今後急速に成長するだろう。カナダを中心とした既存の300MWという規模に、当社が今後2年で追い付くと考えている。日本の建築物は法規制によって北米の建築物よりも屋根が強固にできている。新建築基準法に従っていれば、どのような市販の太陽電池モジュールであっても設置できる。公共施設はさらに基準が厳しいため、ルーフトップ型に最も適している」(同社のアジア太平洋責任者で日本法人の代表取締役である菅野善雄氏)。

なぜ屋根置きなのか

 SPNのCEO兼社長であるピーター・グッドマン氏は、2014年4月に開催された発表会において、太陽光発電システムの未来は分散型電源、それも消費地に直結したルーフトップ型であると主張した。同氏によれば、太陽光発電システムの大量導入は2つの段階を追って進むのだという。

図4 太陽光発電普及の第1段階 出典:SPN

 第1段階は、図4に示したように二酸化炭素の排出量が多い石炭火力や、リスクが高い原子力発電への依存を減らすための取り組みだという。この段階では各国政府の取り組みは発電コストを抑えることよりも、移行スピードを重視する傾向にあるとした。

図5 太陽光発電普及の第2段階 出典:SPN

 第2段階では、発電コスト抑制に目が向く(図5)。このとき、発電装置だけでは十分な発電コスト抑制ができないと指摘した。送電コストを考慮に入れない計画には欠陥があるのだという。なぜなら、図にあるように電力の総コストのうち、発電コストが2を、送電コストが1以上を占めるからだ。このため、メガソーラーではなく、送電コストをそもそも必要としないルーフトップ型の太陽光発電が有利になるという主張だ*3)。固定価格買取制度が終了した時点でも、送電コストの分だけ、ルーフトップ型に強みがある。

*3) 同氏によれば第2段階の太陽光発電にも限界がある。ドイツの夏季のピーク電源のうち、既に34%は太陽光発電によってまかなわれているものの、2020年に向けてさらに比率を高めようとすると、蓄電など他の技術と組み合わせる必要があるとした。

図6 自治体などの分散型電源に対する取り組み 出典:SPN

 このような主張は同社だけのものではない。さまざまな制度的な裏付けがあるのだという。図6には、複数の自治体や業界団体による主張がまとめられている。エジソン電気協会(EEI)は、米国最大の電力事業者の業界団体である。

図7 カナダとオンタリオ州の位置

 太陽光発電を話題にする際、先進的な事例としてカナダが取り上げられることはあまり多くない。カナダ大使館の商務参事官でオンタリオ州政府駐日代表のロバート・アルマー氏によると、北米でルーフトップ型の太陽光発電の導入に意欲的なのは米国のカリフォルニア州とニュージャージー州、同社が本拠を置くカナダのオンタリオ州(図7)だという。

 オンタリオ州はカナダの人口の3分の1が集まり、政治経済の中心でもある。カナダ最大の都市トロントや首都オタワが位置しており、カナダ国内の研究開発予算の約2分の1が集中している。オンタリオ州は2025年までに電力出力の50%(20GW)を再生可能エネルギーでまかなう計画を進めているという。

【訂正】 記事の掲載当初、以下の箇所に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。記事要約部分に「スイスSolar Power Network」とあるのは、正しくは「カナダSolar Power Network」です。1ページ目、図3の直後の段落で「国際航業」とあるのは、正しくは「国際航業グループの国際ランド&ディベロップメント」です。その直後の段落で「九州電力に20年間全量を売電する」とあるのは、正確には「九州電力に接続しているエナリスに売電する」です。2ページ目の第3段落で「既に600社の屋根を借り、約300MWの発電を継続中だ」とあるのは、正確には「600カ所を超える商業・産業・公共施設の屋上で太陽光発電施設を設計、施工、運転しており、全て完成した場合の総容量は300MWだ」です。本文末の1つ前の段落で「ピーター・グッドマン氏によると」とあるのは、正しくは「カナダ大使館の商務参事官でオンタリオ州政府駐日代表のロバート・アルマー氏によると」です。(2014年4月20日)

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.