自動車工場が変わる――日産がカナダ企業と協力して電力を生む自然エネルギー(1/2 ページ)

工場の屋根を貸し出し、太陽光発電事業者が活用する。こうした取り組みを日産自動車が始める。グループ企業である日産車体九州の車両組み立て工場、その広大な屋根をカナダSolar Power Networkに貸し出す。出力2MWの発電が可能になるという。屋根の上の「メガソーラー」にはどのようなメリットがあるのだろうか。

» 2014年04月18日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 福岡県苅田町と工場の位置

 「ここ数年、さまざまな再生可能エネルギーを工場に導入しようと検討してきたが、費用がかさむものが多く、元を取りにくい。そこで工場の屋根貸しに取り組むことになった」(日産自動車 車両生産技術本部環境エネルギー技術部エキスパートリーダーの岸雄治氏)。同社が資材を調達したり、建設を進めたりする必要がなく、太陽光発電事業者にほぼ全てを任すことができる。売電額の一部を賃借料という形で得る形だ*1)

 太陽光発電システムを導入するのは日産車体九州(福岡県苅田町新浜町、図1、図2)*2)。車体を組み立てる車体館の屋根(2万m2)である。

 「同工場では天井コンベアを使って重量物を運んでいたために、屋根の強度が特に高い。現在は生産方式を変えたため天井コンベアは利用していない」(岸氏)。

*1) 同社のグループ企業である日産工機(神奈川県寒川町)はエナリスに屋根を賃貸し、2014年1月から発電(555.66kW)を開始している。神奈川県内の日産自動車の販売店4店舗でも2014年3月から、小規模な屋根貸しを開始している。今回は大規模な事例として初の取り組みだ。この他、遊休地を利用したメガソーラーの事例(関連記事)などがある。
*2) 図2の中央やや下に写っている逆L字型の敷地(総敷地面積236万m2)は、大部分が日産自動車九州の自動車工場。そのうち、南側(下側)の一角を日産車体九州が占めている。今回対象となる日産車体九州の工場は日産自動車が所有している。

図2 太陽電池を屋根置きする日産車体九州の車体館(赤丸)の位置。右上は北九州空港 出典:日産自動車

海外企業にノウハウあり

 日産自動車が契約を結んだ事業者は、太陽光発電事業に特化したカナダSolar Power Network(図3)。

 日産自動車がSPNをパートナーとして選択した理由は複数ある。「カナダ大使館からSPNの紹介を受けた後、屋根貸し事業についてコンペを開催した。SPNは海外で実績があり、日本国内にパートナーを有している。賃借料が最高額だったことはもちろんだ。さらに2万m2という屋根に設置できる太陽電池モジュールの枚数が8000枚と最も多かった。設計施工技術が優れていると判断できた」(岸氏)。

図3 記者会見の様子 右からカナダSPNのCEO兼社長のピーター・グッドマン氏、日産自動車 車両生産技術本部環境エネルギー技術部エキスパートリーダーの岸雄治氏、SPNのアジア太平洋責任者で日本法人の代表取締役である菅野善雄氏

 SPNが費やす今回の事業費は5億円。2014年10〜12月に着工、2015年初頭に完成を予定している。工事の一部は国際航業グループの国際ランド&ディベロップメントが担当する。

 太陽光発電システムの出力は2.13MW。想定年間発電量は2130MWh(213万kWh)。これは一般の610世帯分の年間消費電力に相当するという。二酸化炭素(CO2)の排出削減量は年間3万5000トンだ。SPNは固定価格買取制度(FIT)を利用して、九州電力に接続しているエナリスに売電する。売電価格は40円(税別)である。20年後は設備を撤去するか、日産自動車が買い取ることになるという。

 日産自動車は2013年10月に特定規模電気事業者(PPS)となり、電力の供給を開始している(関連記事)。「PPS事業では電力供給と電力利用のバランスが大事である。九州電力管内では電力の供給先が見つからなかったため、今回はPPSとして取り組まなかった」(岸氏)。

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