太陽光より高効率な「チューブ」、お湯を通すと246Wを生む自然エネルギー(1/3 ページ)

パナソニックは温度差によって発電が可能な「チューブ」を開発した。ゼーベック効果を利用しており、内側に温水、外側に冷水を通じると、それだけで電力が生まれる。長さ20cmのチューブを10本組み合わせたユニット、これを3台連結して246Wの電力を得た。

» 2014年04月22日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 パナソニックは100度以下の熱源(温水)から電力を得る研究開発の成果を2014年4月に発表した。温度差を直接電力に変える「熱発電チューブ」(図1)による成果だ。チューブの内側に温水を、外側に冷却水を通じるだけで発電する。太陽光発電と比較すると面積当たり約4倍*1)の電力を得られたと主張する。

*1) 変換効率20%の太陽電池(200W/m2)と比較した場合。

図1 熱発電チューブの外観。長さは20cm 出典:パナソニック

 同社の問題意識はこうだ。工場や輸送機械の機関は化石燃料を消費して動く。運動エネルギーや電気エネルギーを得るためだ。火力発電所など効率のよい設備を除くと、燃料が持っていた化学エネルギーの約7割は、熱に変わり、捨てられている(未利用熱)。未利用熱のほとんどは200度以下であり、そもそも利用が難しいからだ。この熱を効率よく電力に変換できないだろうか*2)

*2) この温度帯の熱を発電に利用する技術としては、バイナリー発電も有望だ(関連記事)。ただし、パナソニックの技術と比較すると装置の体積が大きくなる。

図2 京都市左京区と試験設備の位置

 同社は2013年3月から1年間をかけ、熱発電チューブを利用した発電検証試験を続けてきた。叡山電鉄鞍馬線の市原駅から約1km西に立地する「東北部クリーンセンター」(京都市左京区静市市原町、図2)の設備を借り受けた実験だ。同センターは京都市のごみ処理施設であるため、豊富な排熱が得られる。

 検証試験設備の全景を図3に示す。もともと備わっていた温水配管と冷水配管の一部を開発した装置で置き換えた形だ。

 発電に直接関係があるのは図下のパイプ群。図右中央から走り、図中央左で右に折れているパイプには温水が流れており、そのまま、3つのシリンダ状の装置を経由している。図左下に見える赤いフランジが目印だ。このシリンダを「熱発電ユニット」と呼ぶ。画面左下から現れるパイプには冷却水が流れており、熱発電ユニットの表面に冷却水を供給している。こちらは青いフランジで区別できる。白く細い曲がったワイヤーは熱発電ユニット間をつなぐ電線だ。

図3 検証試験設備の全体像 出典:パナソニック

 熱発電ユニットのカバーなどの金属部分をアクリルに置き換えた模型を図4に示す。図1で紹介した熱発電チューブが10本入っていることが分かる。熱発電チューブ1本の寸法は長さ20cm、外径14mm、内径10mmだ。つまり厚さ2mmの発電層を挟んで温水と冷却水が流れていることになる。

図4 熱発電ユニットの構造(模型) 出典:パナソニック
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