太陽光より高効率な「チューブ」、お湯を通すと246Wを生む自然エネルギー(3/3 ページ)

» 2014年04月22日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
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他社の技術とはどこが違う?

 なぜ他社と同じ材料を使いながら高い効率が得られるのだろうか。答えは半導体と電極を合わせた構造にある。

 他社の熱電素子では図6のような構造をそのまま数mm角に収めた素子を100個程度並べて、これを平板型のパッケージに収めたものが多い。製造しやすく、一定の性能を得やすい。大型の装置が発する熱を利用する際にも平板型が向く。

 パナソニックは熱源によってはチューブ型が優れていると考えた。温水などパイプを流れる熱源に対しては平板型の素子構造は向かないだろう。曲がった面に平板型ではどうしてもすき間ができる。さらにΠ型構造のままでは、熱を取り込む際のロスが大きいことも分かった。

 そこで、同社は金属と半導体のサンドイッチ構造が斜めにくり返される「傾斜積層構造」を開発した。2011年のことだ。図7の下にある小さな拡大図が傾斜積層構造を表している。金属は熱が流れやすく、半導体は流れにくい。このため、傾斜して積層すると構造内部で周期的な温度分布が生じ、熱の流れと垂直な方向に電気が流れる。図1に示した熱発電チューブでも色がわずかに異なる縞模様が見える。傾斜積層構造の表面を見ているわけだ。

図7 熱発電チューブと傾斜積層構造 出典:パナソニック

 傾斜積層構造は性能に優れるものの、製造が難しい。電極に使う金属は圧力を加えると変形するが、ビスマステルルはもろいからだ。そこで、金属、ビスマステルルともカップ状の構造を作り込み、重ね合わせて接合した。この結果、長さ10cmのチューブを使い、温度差80度の場合に1.3Wの出力を得ている。2011年時点の記録だ。

 この値を今回の結果と比べると、性能が数十倍向上している。「製造時にはろう付けを間に挟んで、プラズマ焼結でニッケル(電極)とビスマステルルの間にすき間ができないように接合した。この構造が当社の今回の発電技術の一番のポイントだ」(パナソニック)。独自の構造とそれを支える製造技術によって、高い出力を得たことになる。

 今回の成果は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である「省エネルギー革新技術開発事業」(2011年度〜2013年度)によるもの。今後の技術開発はどうなるのだろうか。「東北部クリーンセンターの設備は今後も引き続き利用できる状態にある。今後はさらに高い性能と併せて、耐久性の向上を狙いたい」(パナソニック)。

 「今回の開発事業は2013年度で終了したものの、2014年度からは『戦略的省エネルギー技術革新プログラム』で、省エネルギー技術の委託事業を続ける。企業などの提案公募を既に始めており、2014年7月には公募の採択結果を公表する予定だ。公募のタイプにもよるが、中間評価を間に挟むことで、最長7年間の研究開発が可能である」(NEDO)。

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