水力発電が盛んな岐阜県内で中部電力が小水力発電を拡大している。新たに高山市にあるダムの直下に290kWの発電設備を設置する計画だ。これまで発電所を併設していなかったダムで、河川を保護するために放流している「維持流量」を活用して発電する。
中部電力グループが新たに小水力発電を実施する場所は、岐阜県北部の高山市にある「秋神(あきがみ)ダム」である(図1)。北アルプスを源流にする飛騨川の上流に1953年に建設されたダムで、中部電力が運営している。このダムには発電設備はなく、約2キロメートル離れた場所にある「朝日ダム」へ発電用の水力を供給する役割だ。
この発電用の水力とは別に、秋神ダムから下流の河川の自然環境を保護するために「維持流量」を常に流し続けている。中部電力は秋神ダムの直下に小水力発電設備を建設して、これまで利用していなかった維持流量で発電する。既存の放流管に発電用の水圧鉄管を増設して、新設する水車発電機に水流を取り込む(図2)。発電した後の水流は従来通り放流するため、下流の河川には影響を及ぼさない。
「秋神水力発電所」の発電能力は290kWで、年間の発電量は133万kWhを見込んでいる。一般家庭で330世帯分の電力使用量に相当する。中部電力グループで再生可能エネルギー事業を展開するシーテックが担当して、2016年4月に運転を開始する予定だ。これまでシーテックは風力と太陽光による発電事業を手がけてきたが、小水力発電に取り組むのは初めてである。
中部電力は岐阜県を中心に、既存のダムを活用した小水力発電プロジェクトを相次いで開始している。すでに県中部の郡上市や県南部の恵那市でもダムからの維持流量を生かした小水力発電設備の建設計画を進めていて、2カ所ともに2015年6月に運転を開始する。
小水力を生かした「従属発電」、中部電力が岐阜県のダム2カ所で
小水力で電力を稼ぐ、中部電力が岐阜県のダムに設備を追加
「清流の国」に広がる小水力発電、山沿いと平地でも落差を生かす
水力発電:全国で2万を超える候補地、発電コストは火力の2倍
大型風車の落下事故から丸1年、地元の理解を得て再建設が始まるCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
人気記事トップ10