ダム式で2万kW以上の水力発電所、岐阜県の地下で運転開始電力供給サービス

水力発電が盛んな岐阜県で、ダムの豊富な貯水量を生かした大規模な発電設備が動き出した。日本で最大の貯水量がある徳山ダムの直下に建設したものだ。発電能力が2万2400kWの2号機が5月15日に営業運転を開始して、さらに13万1000kWの1号機が2015年6月に稼働する。

» 2014年05月20日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 中部電力が岐阜県を流れる揖斐川(いびがわ)の最上流部に新しい水力発電所を稼働させた(図1)。2009年に着工した「徳山水力発電所」で、2基の発電設備のうち2号機が約5年にわたる工事を終えて5月15日に営業運転に入った。発電能力は2万2400kWあり、ここ数年で新しく稼働した水力発電設備の中では最大の規模になる。

図1 「徳山水力発電所」の位置。出典:中部電力

 この水力発電所は最近では珍しくなった「ダム式」の発電方法による。日本で最大の貯水量を誇る「徳山ダム」から直下にある発電設備まで、145メートルの水流の落差を生かして発電する方法である(図2)。取り込む水の量は最大で毎秒19立方メートルになる。

図2 発電所の建屋。出典:中部電力

 発電所の建屋は地上にあるが(図3)、水車や発電機は地下30メートルの岩盤の中に造った空間の内部に設置されている。さらに2号機とは別に、はるかに規模の大きい1号機の工事が進んでいて、1年後の2015年6月に運転を開始する計画だ。1号機の発電能力は2号機の6倍に相当する13万1000kWに達する。

図3 発電所の全景。出典:中部電力

 1号機は2号機と違って、ダムから長い水路を経由して発電する「ダム水路式」である。しかも2号機より深い地下90メートルの場所に水車や発電機を設置する予定だ。ダムからの水流の落差は182メートルになり、水量も最大82立方メートルと多くなる。ただし2号機が常に発電できるのに対して、1号機は電力需要の多い時だけ稼働する。

 1号機と2号機を合わせると、中部電力の夏の供給力を0.5%高めることができる。火力にも原子力にも頼らない自然エネルギーで増やせる発電規模としては極めて大きい。年間の発電量は3億kWhに達する見込みで、一般家庭で8万世帯分を超える電力使用量に相当する。

 発電に利用する徳山ダムは揖斐川の治水を目的に造られたものである。1971年に計画を開始してから、完成したのは37年後の2008年だった。揖斐川流域の開発計画が変更になり、ダムの建設に伴う自然破壊も問題視された。岩石や土砂を積み上げたロックフィル式のダムで、貯水量は国内最大の6億6000万立方メートルにのぼる(図4)。

図4 「徳山ダム」による貯水。出典:水資源機構

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