アスファルトを燃料に自家発電、製油所が電気料金の値上げに対応スマートファクトリ

石油精製会社の富士石油が主力の製油所に大規模な発電設備を導入する。精製の工程で生まれる大量のアスファルトを燃料にして、3万6000kWの電力を供給できるようにする計画だ。製油所内で使用する電力をほぼ全量カバーして、電気料金を大幅に低減させる。

» 2014年05月26日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 富士石油が発電設備を建設する場所は、千葉県の東京湾岸にある「袖ケ浦製油所」である(図1)。日本で最大級の石油精製能力がある製油所で、年間に300万キロリットルにのぼる石油製品を生産している。製油所内で使う電力量も多く、電気料金の上昇に伴って電力コストの削減が課題になっていた。

図1 「袖ケ浦製油所」の所在地と全景。出典:富士石油

 新たに導入する発電設備にはコストの安い「アスファルトピッチ(ASP)」を燃料に使う。ボイラーでASPを燃焼して高温の蒸気を作り、蒸気タービンで発電する方式だ(図2)。発電に利用した蒸気は製油所の中で再利用する。

図2 発電設備の構成と処理の流れ。出典:富士石油

 発電能力は3万6000kWになり、電力と蒸気を合わせて製油所内で必要な全量の大半をカバーできる見込みだ。これまでも石油精製の副産物を利用して自家発電を実施してきたが、それでも電力会社からの購入比率が高かった。新しい発電設備は2017年7月に運転を開始する予定で、電力コストを大幅に低減することが可能になる。

図3 石油精製の流れ。出典:富士石油

 石油の精製は原油を蒸留装置で分解して各種の製品を作る(図3)。気体になる沸点の違いによって、石油ガスやガソリン、灯油や軽油を生産することができ、残りが重油やアスファルトになる。

 アスファルトは原油に含まれる成分の中で最も重く、ピッチと呼ばれる粘度の高い液体で製品化する。価格が安いために道路の舗装に使うのが一般的だが、主成分は通常の石油やガスと同じ炭化水素で燃料にもなる。

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