なぜスマートハウスが必要なのか、独自の開発を続けるプロジェクトから学ぶ和田憲一郎が語るエネルギーの近未来(1)(2/3 ページ)

» 2014年05月28日 09時00分 公開

エネルギーの前提は「どう生きるべきか」にある

和田氏 両方のプロジェクトを通して、最終的に何を目指すのか。

中村氏 最初に考えなければならないのは、「将来どのような世界を作るか」という点ではないだろうか。スマートコミュニティーといえば、エネルギーを「どう変換するか」「どう溜めるか」「どう活用するか」という方法論になりがちだ。しかし、より重要なのはそれぞれの地域に合った形で、「どう暮らすか」「どう生きるか」「どうあるべきか」という点だと考えている。つまり、「将来どのような世界を作り、そこでどう生きていくか」を基盤として考えなければならない。

 そのような観点でスマートコミュニティーを見直すと、3つのテーマが出てきた。(1)電力インフラを軽減すること、(2)災害に強い町作り、(3)分散エネルギーの社会的価値を高めるという3つだ。

(1)電力インフラを軽減

 分散型エネルギーシステムが普及すると、需要側でのピークカット、ピークシフトを実行でき、電力インフラの負荷を軽減することができる(図1)。しかし、特定の地域に集中・大量導入すると、系統側の電圧上昇や電圧の振動などが発生するだろう。どこまで分散エネルギーを導入することが最適なのか、シミュレーションを進めながらシナリオを組んで検討することが必要になる。

図1 需要家側でのピークシフト/ピークカット 出典:スマートエナジー研究所

(2)災害に強い町作り

各家庭に分散型エネルギーシステムを導入すると、地震などの災害が起きてもエネルギー供給が絶たれにくい建物が多くなり、災害に強い町づくりが可能となる。再生可能エネルギーを効率的に利用し、人と環境が調和する社会の実現に近づく。

(3)分散エネルギーの社会的価値を高める

 エネルギーの利用効率を上げるためには、現在進めている再生可能エネルギーによる電力と、系統からの電力を調和させる必要がある。そうすることにより、再生可能エネルギーを効率よく使うことが可能となる。

 分散エネルギーを既存の電力と調和させるメリットは幾つもある。ピークカット、ピークシフトにより電力会社の最大需要電力を下げるとともに、コミュニティーの中でエネルギーを融通できる。さらには電力不足時、クラウドと連携してダイナミックな対応ができるなど、多くの利点があるだろう(図2)。

図2 分散エネルギーシステムと系統電力との協調 出典:スマートエナジー研究所

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