角度を考えた成田国際空港、太陽光発電で2MW自然エネルギー

成田国際空港は出力2MWのメガソーラーの建設を開始した。滑走路近くに置くものの、太陽電池モジュールには変わったところがない。角度を考えて、まぶしさを抑えた。

» 2014年05月29日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 千葉県成田市と成田国際空港の位置

 航空機が年間約20万回発着し、3000万人以上が利用する巨大空港、成田国際空港。空港周辺に何らかの設備を新設する場合は、高さ制限など電波障害を引き起こさないようさまざまな制限がある。

 「2011年に策定したエコ・エアポートの基本計画に基づいて、2014年4月から出力2MWの太陽光発電所の建設を開始した。2015年3月に完成を予定する」(成田国際空港、図1)。環境負荷低減と遊休地の有効活用を目的にした計画だ。

 同空港には北北西から南南東に延びる2本の滑走路がある。A滑走路(全長4000m)とB滑走路(同2500m)だ。A滑走路、B滑走路と交差するC滑走路(同3200m)は建設工事を凍結している。太陽光発電所を建設するのはC滑走路から空港外にわずかに外れた「C滑走路西側航空保安施設用地」である。図2では上下にB滑走路とA滑走路が描かれており、斜めに走るC滑走路の下に太陽光発電所の敷地がある。

図2 空港の主要施設と太陽光発電所(赤丸)の配置(クリックで拡大) 出典:成田国際空港

 これほど滑走路に近い位置に太陽電池モジュールを多数配置しても大丈夫なのだろうか。「A滑走路とB滑走路へ離着陸する場合とアプローチする場合の角度を考え、干渉しない向きに太陽電池モジュールを並べる。光を反射しにくい太陽電池モジュールを採用してはいない」(同社)。福島空港などと並んで国内の空港としては新しい考え方だ。関西国際空港長崎空港では、光を反射しにくい太陽電池モジュールを選定している。

建設費用は6億円

 成田国際空港が太陽光発電所建設を発注したのはNTTファシリティーズ。2014年4月22日に随意契約(企画競争)を結び、翌日に着工した。契約金額は6億1992万円。受変電設備一式と外灯など保安設備一式も立ち上げる。

 図2で紹介した配置は、完成予想図では図3のようになる。図3の中央上に見えるのがC滑走路予定地、左上から右に向かって伸びるのがA滑走路だ。左上から右下に走る道路が2本あり、下側が空港の敷地の境界となる。太陽光発電所の右側、図3の中央に見える三角形の土地は、発着する航空機の見学に適した「桜の丘」だ。

図3 滑走と太陽光発電所の位置関係 出典:NTTファシリティーズ

 図4は太陽光発電所の拡大図である。面積約3万m2の敷地に、太陽電池モジュールを敷き詰めている。中央に見える白い立体はパワーコンディショナーを収めたキュービクルだ。

図4 太陽光発電所の完成予想図 出典:NTTファシリティーズ

 太陽光発電所の年間予想発電量は、一般世帯550戸分に相当する200万kWh。固定価格買取制度(FIT)を利用して、全量を東京電力に売電する予定である。

 「今回の敷地以外にも、空港の周囲には未利用の施設用地が比較的多数散らばっている。太陽光発電所完成後に運用しながら、他の自然エネルギーも含めてどの程度増強していくのかを考えていく」(同社)。

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