バラの花? 貝殻? オランダの風車が21世紀らしい形に自然エネルギー

オランダThe Archimedesによれば、家庭向けに最適な風車の形状は三枚羽根のプロペラ型ではない。らせん状の風車を使うと、騒音がなく、家庭で消費する電力量の半分をまかなうことが可能だという。

» 2014年05月30日 12時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 オランダの企業The Archimedesが奇抜な外観の風車を開発した(図1)。大規模な風力発電所ではなく、家庭向けに設置することを考えた結果、このような形状に至ったのだという。

 2014年5月に公開した「Liam F1 Urban Wind Turbine」の特徴は2つある。一般的な三枚羽根のプロペラ型風車に比べてより多くのエネルギーを取り出すことができ、動作時の騒音も少ないことだ。これは家庭向けに特化した設計による。

図1 家庭向けの新型風車「Liam F1 Urban Wind Turbine」(クリックで拡大) 出典:The Archimedes

5mの風で1.5kWhを発電

 Liam F1 Urban Wind Turbineの発電能力は家庭向けとしては十分だ。風速5m/s*1)の風を受けると、平均1500kWhの電力を生みだす。一般家庭の消費電力量の半分程度を生み出すことから、太陽光発電システムなどと組み合わせれば、電力を自給できる家を設計できるという。自給までいかなくとも、2種類の再生可能エネルギーを組み合わせることで、系統から購入しなければならない電力量は確実に減る。

 Liam F1 Urban Wind Turbineを開発したThe Archimedesのマリヌス・ミーレメット(Marinus Mieremet)氏は、大規模な電力を生み出している風力発電装置をぜひ家庭でも利用できるようにしたいと考えた。だが、3枚羽根の風車を家庭に据え付けることは難しい。課題が2つある。第1に住居と風車を密着させると耐えがたい騒音に襲われること、第2に家庭向けに風からエネルギーを取り出す効率が低くなることだ。約25%である*2)

*1)天気予報などで使われるビューフォート風力階級では風力3(3.5m/s〜5.5m/s)に相当する風の強さ。陸上では「木の葉や細かい小枝絶えず動く。軽い旗が開く」という規模である。
*2) 25%という効率の根拠は発表資料にははっきりと明示されていない。ただし、家庭向けに低騒音化を進めようとすると、風速に対する羽根の回転速度(先端速度)を小さくする必要がある(周速比が小さい)。このような用途ではサボニウス型やアメリカ多翼型、ダリウス型などの風車が、3枚羽根のプロペラ型よりも効率が高くなる。なお、3枚羽根のプロペラ型は周速比が7前後の時に最も効率が高くなる。

オウムガイの殻の形にヒントを得た

 同氏の試みは2000年ごろから始まっている。オウムガイ殻の形状やアルキメデスの理論、同氏が編み出した数学的手法を組み合わせて家庭向けに適した羽根の形状を改善してきた。その様子が図2にまとまっている。当初はネジのような形を取り、次に同心円のような形に変わっていった。まるで「アルキメデスのらせん」のようだ。2012年以降に現在の形へと落ち着いてきたことが読み取れる。

 らせんのような形状を採っているものの、風上に向かって自律的に方向を変える能力があるという。

図2 2000年以降の開発モデル一覧(クリックで拡大) 出典:The Archimedes

 同社は今回の発表以前に、既に14カ国で7000の風車を販売済みだとした。今後は家庭向けよりもさらに小さい風車の開発を進める。主な用途は、ボートや外灯の柱、水上用途である。

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