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» 2014年06月25日 09時00分 公開

実はメガソーラーよりも強力? 小規模バイナリー発電小寺信良のEnergy Future(2/3 ページ)

[小寺信良,スマートジャパン]

日本の技術者が米国発の技術を生かす

 国内では2013年10月から販売が始まった。これまでに9件(15基)を設置、そのうち2013年度中に既に3件(4基)が運転に入ったという。2014年1月にコスモテックが発表した大分県別府市の温泉蒸気を利用した発電所*3)は、Thermapower 4基で500kWの発電を見込んでおり、この夏ごろに運転を開始する。第一実業は、2014年度の受注見込みとして海外案件も含め、年間30基を予想。さらに2017年までには年間50基の製造販売、2020年には年間100基の製造販売を目標としている。

 これまで国内でのThermapowerの販売と設置は2社が担ってきた。地熱と焼却施設は第一実業、産業用は西華産業だ。今回の発表会では、第一実業がAccess Energyの国内製造権を獲得したことが発表された(図3)。今後は製造から販売、組み立て、設置、試運転まで、国内のエンジニアが担当できるようになる。

*3) 関連記事発表資料

図3 Access Energyと第一実業の記者発表会から。左がAccess Energy副社長のハーマン・アルティニアン氏、右が第一実業執行役員の山野宗男氏

 何が変わるのだろうか。これまでは米国で組み上げられたおよそ2.6トンのシステムを、丸ごと船便で輸入していた。さらに既存設備へどのように組み込むかといった方法の検討はもちろん、設置についても米国からエンジニアを呼んで来なければできなかった。

 今後は、発電機のキーデバイスとなるタービンや制御回路はAccess Energyから輸入するものの、それ以外の部材は国産品を使用、さらに日本の技術で溶接などの組み立て作業を進める。現時点では、第一実業はファブレスなので、当面の製造は外部業者に委託となるが、ゆくゆくは内部にも製造組織を作り、メーカーへと転身したいという。

 組み込みや設置も日本のエンジニアだけで進めることができるようになるので、トータルの導入コストは安くなるという。日本製のThermapowerは、国内では同社と西華産業で、海外には第一実業の販売網を通じて、東南アジア、韓国、台湾などにも販売されていく。

2014年から国内の地熱利用が変わった

 ご承知のように日本には火山が多く、温泉地も多い。地熱というエネルギー資源は豊富に存在するものの、これまで地熱発電はあまり積極的に進められなかった。

 多くの地熱資源が国立公園内にあるため、発電所の開発が難しかったことが、理由の1つとして挙げられる。だが、2012年に環境省によって規制が緩和され*4)、地域の関係者による合意形成など幾つかの条件をクリアすれば、開発が可能になった。

 さらに小規模な発電についても認められることとなった。環境省の通知文書内においても、具体的に「バイナリー発電など」と記載されており、この技術が国としても大きくフィーチャーされてきたことが分かる。

*4) 関連記事環境省の通知の内容(PDF)

 従来、地熱発電と言えば、熱源に向かって専用の井戸を掘る大規模発電も、噴出する蒸気だけを使う小型のものも一緒くたに語られてきた。このため発電所が原因で温泉が枯渇する、お湯の温度が下がるといった懸念があった。地元の温泉組合などをはじめとする団体の理解が得られなかった理由である。ところが、バイナリー発電の登場によって、今度は温泉事業者自身が発電に乗り出すようになったのは、大きな変化だ。

 しかし規制緩和がまだ不十分だった。2012年の規制緩和では、熱源として「輻射熱、常圧100度以下のお湯(蒸気)」は届け出なしで利用可能になったものの、100度以上の大気圧を超える蒸気は、届け出や専用の検査が必要なままだった。さらに運転には専任の技術者が必要となるなど、規模にかかわらず大型火力発電と同じ規定の枠でしか運用できないため、思ったほど利用が進まなかった。

 このような事態を受けて、経済産業省は2014年5月20日に、「バイナリー発電設備に係るボイラー・タービン主任技術者の選任及び工事計画届出等」を改定*5)した。今後は100度以上の大気圧を超える蒸気も、届け出なしで利用できるようになった。小規模バイナリー発電に関しては、まさに2014年から追い風が吹き始めたというタイミングである。

FIT制度にも課題あり

 地熱発電には固定価格買取制度(FIT)が適用され、40円/kWh*6)で買い取ってもらえる。現時点でのThermapowerは、設置費用が6000万〜8000万円と幅がある。発電に多少のムラがあったとしても、2年〜3年で損益分岐点を迎える計算になる。

 地熱よりも運用が難しいのは、工場や焼却施設からの廃熱利用である。これらの廃熱を利用して発電したとしてもFITの対象とはならない。発電した電力を自家消費することで、従来の利用電力を削減するという方向にならざるを得ない。製造業が多く、巨大な消費市場を持つ日本において、産業廃熱の積極的な利用は1つの鍵であるはずだ。前政権時代に大慌てで作ったFITも、見直しが必要だろう。

*5) 関連記事改定内容
*6) 買取価格(調達価格)は発電の規模によって2つに分かれる。出力が1万5000kW以上の大型のものは26円(税別、15年間)、それ未満が40円(税別、15年間である)。

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