ため池で太陽光発電、全国一の密度を誇る香川県が実証実験へスマートシティ

日本で最も面積が狭い香川県には農業用のため池が約1万5000カ所もある。瀬戸内海に面して日照時間が長い利点を生かすには、ため池に太陽光パネルを浮かべる発電方法が有効だ。県内でも有数の規模がある大きなため池を使って10月から実証実験を開始する。

» 2014年07月09日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 ため池の風景。出典:香川県農政水産部

 香川県が昔から抱えている最大の課題は夏の渇水で、晴れの日が長く続いて雨が少ない。渇水対策の1つとして農業用のため池を県内各地に造り、池に貯めた水を大切に使ってきた(図1)。ため池は大きなものだと10万平方メートルを超える広さがある。県内に数多く分布するため池を太陽光発電に活用する取り組みが始まろうとしている。

 香川県の農政水産部が実証実験の開始に向けて、発電設備を設置する事業者を7月7日から公募中だ。実証実験の場所に選んだのは県の北西部にある善通寺市の「吉原大池」である。満水時の面積が10万平方メートルもある県内有数のため池だ。この吉原大池に20kW程度の太陽光パネルを浮かべて最適な発電方法を検証する。

図2 実証実験の予定地。出典:香川県農政水産部

 実証実験は2通りのパターンに分けて実施する計画だ。それぞれ同じ太陽光パネルを使って、パネルの設置角度や池に浮かべるフロートの方法を変えて発電量を比較する。池の水面では風や波による影響があるほか、水位が変動して発電量に影響を及ぼすことも想定される。事業者には観測データのとりまとめも含めて依頼する。業務委託費は1480万円が上限である。

 香川県は8月中に事業者を選定して、10月下旬から実証実験を開始する予定だ。2015年度も実証実験を継続しながら、県内のため池に太陽光発電を普及させる活動を推進していく。ため池で発電した電力は固定価格買取制度で売電して、実証実験の費用回収に役立てる。

 全国には約20万カ所のため池があって、その半分以上は瀬戸内海の沿岸地域に集中している。最も多いのは兵庫県で4万カ所以上あり、香川県は1万4619カ所で3番目に多い(図3)。しかも県の面積1平方キロメートルあたりの数は7.79カ所に達して第1位の密度である。全国で面積が最も狭い香川県においては、ため池を利用した太陽光発電は再生可能エネルギーを拡大する有効な対策になる。

図3 ため池の多い県(密度は県の面積1平方キロメートルあたりの数)。出典:香川県農政水産部

 すでに埼玉県の桶川市では工業団地の中にある調整池に太陽光パネルを浮かべた水上式のメガソーラーが稼働している(図4)。この調整池の広さは3万平方メートルで、1.2MW(メガワット)の発電能力がある。

図4 「ソーラーオンザウォーター桶川」の全景。出典:ウエストエネルギーソリューション

 香川県の実証実験の対象になる吉原大池は3倍以上の面積がある。県内には吉池大池を含めて面積が3万平方メートル以上のため池は20カ所以上を数える。ため池を活用した太陽光発電が渇水対策に悪影響を及ぼさないことを実証できれば、地域の分散型電源として災害対策にも生かせる。

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