佐賀県を走る自動車専用道路に沿ってメガソーラーの建設工事が始まる。「有明海沿岸道路」の一部区間2キロメートルの側面に太陽光パネルを設置する計画で、道路法の改正によって実現する全国初の発電事業になる。事業者は無償で土地を利用できる代わりに、道路の点検や維持管理を代行する。
2013年4月に道路法が改正されて、太陽光発電設備などを設置することが可能になった。「太陽光王国」を目標に再生可能エネルギーの導入を進める佐賀県が、いち早く法改正を生かして道路の法面(のりめん)にメガソーラーを建設するプロジェクトを計画した(図1)。県の公募によって選ばれた事業者が7月中に建設工事に着手する。
対象の道路は佐賀県の鹿島市から福岡県の大牟田市を結ぶ「有明海沿岸道路」で、途中の2キロメートルに及ぶ区間を利用する(図2)。南向きで約1万平方メートルある斜面に、合計1MW(メガワット)の太陽光発電設備を建設する予定だ。年間の発電量は120万kWhを見込んでいて、一般家庭で330世帯分の使用量に匹敵する。運転開始は12月を想定している。
このメガソーラーの特徴は細長く連なる用地を20区画に分けて、それぞれの区画に低圧(50kW)の発電設備を設置する点にある(図3)。低圧にすることで電力会社の送配電ネットワークに連系しやすくなり、災害時には独立型の電源として沿線の避難所などにも電力を供給できる。
世界各地で都市計画などを手がけるオリエンタルコンサルタンツが、長崎県の工事会社である大東設備と連合体を組んで事業にあたる。2社の連合体は佐賀県から道路の法面の占用許可を受けて、5年ごとの契約で最長20年間にわたって発電事業を運営することができる。
道路の法面の使用料は発生しない。その代わりに事業者は太陽光パネルを設置する近辺の道路や付属物を無償で点検するほか、除草や法面保護に必要な作業を継続的に実施して、道路管理者の佐賀県へ報告する義務を負う(図4)。事業者にとっては発電設備と合わせて道路を維持管理することでコストを削減できる一方、県にとっては道路の維持管理費を節約しながら地域の再生可能エネルギーを拡大できるメリットがある。
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