秋田で「強風」に耐える、2MWの新型風車自然エネルギー(1/2 ページ)

日立キャピタルと日立製作所は、2015年度上期の完成を目指して秋田市に出力2MWの風力発電所を立ち上げると発表した。従来機よりも強い風に耐える新型風車を初導入する。

» 2014年07月16日 09時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
図1 秋田市と発電所(赤)の位置

 日立キャピタルと日立製作所は2014年7月14日、「秋田天秤野(てんびんの)風力発電所」(秋田市新屋天秤野、図1)の建設を決定したと発表した。2014年1月に両社が共同で設立した日立ウィンドパワーが事業者となる*1)。2014年度下半期に建設を開始し、2015年度上期中の完成を予定する。

 「発電所建設の目的は2つある。日立ウィンドパワーに新型の風車を販売して同社による売電事業を進めることが1つ。もう1つは新型風車の性能データ*2)を得て、外部機関の認証を取得し、今後の採用につなげていくことだ」「秋田県を選んだ理由は、県の風車誘致政策と合致するからだ。当社は風車の性能データが必要であり、県は風車の試験場も誘致している」(日立製作所)。

図2 建設予定地 出典:日立製作所

 建設予定地(図2)は日本海の海岸から約500m離れており、風況がよい。自衛隊の演習場と海岸に挟まれた立地であり、近隣住宅もないため、性能試験に適するという。面積約1万8000m2の県有地を日立製作所が20年間借りる。

*1) 日立ウィンドパワーは2014年4月に「中条風力発電所」(新潟県胎内市、2MW)の運転を開始しており、茨城県神栖市に建設中の設備を含めて、秋田市の設備は3カ所目に当たる(関連記事)。
*2) 発電用の風車以外に発電所敷地内に風況を観測するための風況ポールを設置して性能確認を進める。

新型風車は強い風に耐える

 秋田天秤野風力発電所に設置するのは定格出力2.1MWの「HTW2.1-80A」*3)。今回が初号機である。発電機を内蔵するナセルの風下側にブレードを配置したダウンウィンド型の風車だ(図3)。「従来機種の『HTW2.0-80』との違いは3点ある。第1に出力を2MWから2.1MWに高めたこと。第2に強い風に対する性能を1割高めたこと。第3に義務化された瞬時電圧低下時の運転継続機能(FRT:Fault Ride Through)を標準搭載したことだ」(日立製作所)。

 日本は台風などの強風はもちろん、地形によって風が乱れやすく世界でもまれな風車に厳しい環境だという。このため、IEC(国際電気標準会議)が定めたClass IAに準拠した。「従来機は極地10分平均風速50m/秒に耐えたが、新型機は同55m/秒へ性能を高めた。3秒平均風速に対しても70m/秒から77m/秒へと性能が向上している」(日立製作所)。

*3) ハブ高さ(タワーの高さ)は78m、ローターの直径は80m。発電を始めることができるカットイン風速は4m/秒、発電が可能な最大風速であるカットアウト風速は25m/秒。通常時はヨーをアクティブ制御する。ナセル内に交流励磁同期発電機を内蔵している。

図3 設置する風車(HTW2.1-80A)の外観 出典:日立製作所

 秋田天秤野風力発電所では高圧で系統連系するため、系統への出力は2.1MWではなく、1.99MWである。想定年間発電量は、一般家庭1600世帯の年間使用量に相当する570万kWh。固定価格買取制度(FIT)を利用して全量を20年間、東北電力に売電する。買取価格(調達価格)は22円(税別)。売電収入は年間約1億2500万円である。「日立ウィンドパワー側の総事業費は公開していないものの、今回のような2MW級風車の機材費用と建設工事費用を合計すると、1基当たり約5億円を要する」(日立製作所)。

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