全国レベルで電力の需給調整を図るために、周波数の違う東日本と西日本のあいだの連系能力の増強が急務になっている。政府は東京電力と中部電力が計画中の新しい連系設備を2020年度に運用開始できるように「重要送電設備」の第1号に指定して、建設に必要な手続きを円滑に進める。
東日本と西日本では電力の周波数が違うために、東西間で融通できる電力の大きさに制限がある。現在は120万kWが限界で、これ以上の電力は東日本(北海道・東北・東京の3地域)と西日本(中部や関西など6地域)のあいだで融通することができない。政府は2020年度を目標に東西間の連系能力を90万kW増強して合計210万kWまで拡大できるように、東京電力と中部電力の建設計画を後押しする。
現在のところ東西間の連系設備は3カ所にある「周波数変換装置(FC:Frequency Converter)」で構成している(図1)。長野県の「新信濃FC」のほかに、静岡県の「佐久間FC」、さらに2013年2月に連系能力を増強した「東清水FC」があり、それぞれのFCで東日本用の50Hz(ヘルツ)と西日本用の60Hzの電力を相互に変換することができる。
東京電力と中部電力の計画では、新信濃FCの連系能力を現在の60万kWから150万kWへ拡大する。これに合わせて中部電力は岐阜県内に「東京中部間連系変換所」を建設して、90万kWの電力を変換できるようにする計画だ(図2)。さらに新信濃FCから東京中部間連系変換所までの送電線と、同変換所から中部電力の幹線までの送電線も敷設する。
政府は将来の電力需給状況を安定させるうえで地域間の連系能力の増強が不可欠として、特別に「重要送電設備」に指定して迅速に整備できる体制を構築する方針だ。経済産業大臣が重要送電設備に指定すると、関係省庁や自治体が協力して連系設備の建設を促進する体制ができる。
東京−中部間の連系設備は8月22日付で、重要送電設備として第1号の指定を受けた(図3)。これに先立って8月7日に関係する6省庁(経済産業省、国土交通省、農林水産省、林野庁、文化庁、環境省)が合意したほか、送電設備を建設する地元の長野県知事と岐阜県知事からも異議なしの回答を受領済みだ。
国内では周波数の変換を必要とする東京−中部間のほかに、変換を必要としない北海道−東北間と中部−関西間でも連系設備(送電線)を増強する計画が進んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.