積水化学工業は2014年12月1日、下水熱を空調などに利用する「エスロヒート下水熱−管底設置型」を発売する。下水管の中に、熱媒体が循環する閉鎖パイプを設置し、下水の熱を取り出すため、下水管自体を交換しなくても設置できる。
積水化学工業は2014年12月1日、下水熱を空調などに利用する「エスロヒート下水熱−管底設置型」を発売する。下水管の中に、熱媒体(水や不凍液)が循環する閉鎖パイプを設置し、下水の熱を取り出すというもの。「全国で公共機関以外にも、民間事業者向けに販売する」(同社)。
空気の熱を取り出す通常の空気熱ヒートポンプシステム(空調)と比較して、電力コストを約30%削減できるという。これは下水の温度が年間を通して15〜25度に保たれており、冬は大気よりも暖かく、夏は大気よりも冷たいためだ。これが空調よりも効率が上がる理由だ。空調以外にも温水を取り出す、融雪用の熱源として利用するといった用途があるとした。
エスロヒート下水熱−管底設置型は、大きく3つの部分からなっている(図1)。下水管内から熱を取り出して目的地まで運ぶ集熱管*1)と、熱を受けとってさらに熱量を増やす電動のヒートポンプユニット、建物内に取り付ける室内機だ。「集熱管の価格は1m当たり15〜30万円。ヒートポンプユニットは不凍液から熱を取り出すため、専用品が必要である」(積水化学工業)。集熱管は樹脂製であり、設置後50年程度できるという。
「図1は大阪市の冬季のデータを示したものだ。夏季は大気よりも低温の下水道から冷熱をくみ出し、さらに温度を下げて建物に供給する」(同社)。東京でも図1とほとんど同じ温度になるという。
*1) 図1にあるように下水熱を回収する集熱管と、建物内部の熱媒体は、ヒートポンプユニットを介して完全に独立している。集熱管はヒートポンプユニット内の手前側で熱を受け渡して再び下水管の方に戻っていく。
同社は下水熱の利用について、2012年に海老江下水処理場(大阪市福島区)で大阪市や東亜グラウト工業と共同の実証事業を開始。2013年には仙台市と共同で取り組み、スーパーマーケット店舗での給湯に利用している。
2013年に事業化した「エスロヒート下水熱−らせん型」は、今回の「エスロヒート下水熱−管底設置型」と類似した取り組み。2つのシステムの違いは、こうだ。
らせん型は老朽化した下水道管路を対象とした製品(図2)。下水管の内側に硬質塩化ビニル材をらせん状に設置して管路を更生すると同時に、更生管自体が熱回収管として働く。
今回の管底設置型は、更生工事とは無関係に設置できることが特徴だ(図3)。下水管の形状にも左右されない。断面の形状が円形でも長方形でも構わない。ただし、直径が800〜1800mm(幅が800〜2400mm)である必要がある。
なお、同社は下水熱ではなく、地中熱を利用するシステム「エスロヒート地中熱 水平型」の事業化を2014年10月に開始している。垂直に採熱管を埋め込む「ボアホール式」と比較して、施工コストを約40%削減できることが特徴だ(関連記事)。
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