非常電源を備えた15MWの大規模太陽光、設置角度も工夫自然エネルギー

NTTファシリティーズは、2014年11月、岩手県奥州市と「奥州万年の森公園メガソーラー(仮称)」の設置・運営事業の実施に向けた基本協定を締結したと発表した。2016年10月の完成を予定する。自然環境の維持を重視したメガソーラーとなる予定だ。

» 2014年11月28日 14時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 岩手県奥州市と発電所の位置

 NTTファシリティーズは、2014年11月、岩手県奥州市と「奥州万年の森公園メガソーラー(仮称)」(奥州市前沢区)の設置・運営事業の実施に向けた基本協定を締結したと発表した(図1、図2)。2014年12月に賃貸借契約を締結後、2015年1月に着工、2016年10月に発電開始を予定する。

 出力は15MW(予定)。年間発電量は1万4640MWh(一般家庭4000世帯分)。固定価格買取制度(FIT)を利用して全量を東北電力に売電する。

 「奥州万年の森公園は『公園』という名前が付いているものの、整備された公園ではない。遊歩道がある程度だ。2006年に合併した旧前沢町時代から、自然環境を維持しつつ活用する手法を探る中、今回のメガソーラー事業に至った形だ」(奥州市)。後世に森をつなげ、1万年以上緑を残したいという大きな夢を掲げており、これまではNPOによる小規模な植樹祭を開催していた土地だ。

 今回は約63haの森のうち、約53haをNTTファシリティーズに貸し出し、そのうち、21haを太陽光発電所として活用する。奥州市には財政負担がなく、土地の賃借料と法人税を受け取る。

 現地は北上川から西に5kmほど離れた土地。標高150m程度の細長い台地に立地するため、周囲の土地では森の中に畑が点在する。

図2 奥州万年の森公園メガソーラー(仮称)の完成予想図 出典:NTTファシリティーズ

停電対応にも役立てる

 奥州市の公募型プロポーザル方式では、発電能力よりも森の活用や地域の自然環境維持に重きを置いた。その結果、景観や地域環境に配慮したデザインを採るメガソーラーを立ち上げることになった。発電所本体以外にも東屋や遊歩道、見学用高台を設置し、地域の災害対策に役立つよう停電対応型システムを併設する。

 図3はメガソーラーのエントランス部分の完成予想図だ。図中央にある屋根は出力10kWの太陽電池モジュールを搭載し、自立型パワーコンディショナーと接続する。これが停電対応だ。

図3 停電に備えた小型太陽光発電システム 出典:NTTファシリティーズ

設置角度を15度に設定

 奥州市の中心部は冬季に30〜40cmほど積雪する。このため、太陽電池モジュールの設置角度を工夫した。「当社の発電所は経済性を高めるため、設置角度として10度を選択することが多い。奥州市では雪に備えるため、15度にする計画だ」(NTTファシリティーズ)。

 メガソーラーでは太陽電池モジュールの仕様を決めた後、発電量を最大化する制約条件が大きく2つある。まずは前列のモジュールの影が後列に掛からないように配置することだ。つまり敷地面積のうち一部を利用できない。設置角度を0度にすると影の影響がほとんどなくなるため、面積当たりの設置枚数を最大化できる。これがNTTファシリティーズのいう経済性の意味だ。

 もう1つの条件は太陽の日射角度。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の調査によれば、仙台市では30度に設置した場合に平均日射量が最大になる。しかし、20度や40度に設置しても、真南に向けて設置した場合、年間発電量は2%程度しか減少しない。

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