水素ステーションのコスト低減策、「見えない条件」があった和田憲一郎が語るエネルギーの近未来(9)(3/4 ページ)

» 2015年01月15日 09時00分 公開

水素ステーションの仕様が固まるまで

和田氏 次に水素ステーション建設の経緯について聞きたい。

小笠原氏 本格的に水素ステーションの施工に取り組み始めたのは、2002年の「JHFC千住水素ステーション」(東京都荒川区)からだ。一次下請という立場で、機械設備工事一式を請け負った。

和田氏 水素ステーション建設での一次下請とは、どのような役割なのか。

小笠原氏 水素ステーション工事では、施主(顧客)がいて、元請と呼ばれるエンジニアリング企業に水素ステーション建設工事の依頼を出す。エンジニアリング企業は、顧客が出した費用や期間などの要請に応じて各種のシミュレーションを進め、最適な構造を設計する。その後、主に一次下請と呼ばれる企業に実際の機器などを発注することが多い。当社は2010年まで一次下請工事が多かったものの、2012年の神の倉水素ステーションやJHFC横浜・旭水素ステーションからは元請の立場で建設に携わっている。

和田氏 水素ステーションの仕様は、施主と元請が調整して決める場合が多いのか。

小笠原氏 全てではないが、主に施主と元請で調整して決めている。例えば次世代自動車振興センター(NEV)の補助金を受けるためには、1時間当たりFCV5〜6台の充填を行う能力がなければならない。どのような機器をそろえれば、これに対応可能なのか、このようなことを検討している。当社の強みは実際の充填時間とシミュレーションを比較しながら検討できることである。

和田氏 他社の取材では機器に選択肢があることを聞いた。例えば圧縮機であれば、差圧充填方式か直充填方式かといった選択肢がある。このような判断も施主と元請の調整で下しているのか。

小笠原氏 基本的に施主の要望する金額と期間、仕様を吟味し、候補となる土地のレイアウトを考えながら、調整している。

和田氏 水素ステーションは建設コストが高いといわれている。どのようにコスト低減に取り組んでいるのか。

小笠原氏 最も有効なのは仕様の標準化である。できる限り同じ仕様のモノを作ることでコスト低減を実現できると考えている。もう一つは住宅と同じようにユニット化を図ること。ただし、土地の形状が一定ではないので限界もある。加えて、施主からはFCVの普及速度が分からない中で、ユニット化すると将来の拡張性がないのではという懸念もある。

和田氏 水素ステーション建設で規制緩和を望む点は何か。

小笠原氏 いろいろある。最も困っているのは、高圧ガス保安法における距離規制だ。各機器を敷地境界や道路境界から8m以上離す必要があるという規制である。郊外の何もない土地では問題がない。対応しにくいのは市街地だ。レイアウト上、どうしてもこの8mという距離を取ることができない場合が多い。そのため、高さ6m以上の壁面を設け、沿面距離(壁面の表面に沿った最小距離)として確保するといった対応を取っている。しかし、この方法では施設に圧迫感がある。どうしても小型プラントというイメージになってしまう。

 現在のNEVの補助金規定は、前述のように1時間当たりFCV5〜6台を充填できる能力を求めている。FCVの普及初期段階ではそれほどクルマは来ない。もう少し規模を小さくし、例えば1時間当たり1〜2台の規模で運営する規定を設けて単価を下げる方策はどうだろうか。FCV車両が増えた後は、それに合わせて水素ステーションを拡充していく手もある。

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