風力発電所を被災地に、宮城県の石巻市で20MWの建設計画が進む自然エネルギー

東日本大震災では宮城県で最大の人的被害を受けた石巻市の丘陵地帯に、発電能力20MWの風力発電所を建設する計画が進行中だ。全国各地で太陽光と風力発電を展開するユーラスエナジーが石巻市の復興支援を兼ねて実施する。運転開始は2018年3月を予定している。

» 2015年02月03日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 ユーラスエナジーホールディングスは「石巻風力発電事業」の建設工事に向けて、環境影響評価の手続きのうち3段階目にあたる「準備書」を1月30日付けで経済産業大臣に提出した(図1)。この後に「評価書」を提出して認可を受けると建設工事を開始することができる。

図1 「石巻風力発電事業」の実施区域。出典:ユーラスエナジーホールディングス

 石巻市の中心部から5キロメートルほどの場所にある「籠峰山(かごみねやま)」の尾根に沿って、8基の大型風車を建設する計画だ。1基あたりの発電能力は2.5MW(メガワット)を予定していて、合計で20MWの規模になる。現時点の計画では2016年6月に着工して、2018年3月に運転開始を見込んでいる。

図2 風力発電機の大きさ。出典:ユーラスエナジーホールディングス

 設置する風力発電機は風車の羽根(ローター)の直径が103メートルあり、中心部にあたるハブまでの高さは地面から85メートルになる(図2)。風速が毎秒3メートル以上になると発電を開始して、毎秒12〜14メートルの時に発電能力が最大になる仕様だ。

 籠峰山の一帯は年間の平均風速が毎秒6メートルに達する風力発電に適した地域である。平均風速が毎秒6メートルの場合には、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は23%程度を想定することができる。年間の発電量は約4000万kWhに達して、一般家庭で1万1000世帯分の使用量に匹敵する規模になる。

 この風力発電事業は環境省が東日本大震災の被災地を対象に実施した「平成23年度再生可能エネルギー事業のための緊急検討委託業務」に選ばれている。現在までの環境影響評価でも特に大きな問題点の指摘はなく、計画どおりに建設工事を開始できる見通しだ。

 石巻市では再生可能エネルギーの導入量を拡大するのと合わせて、地域全体の電力需給バランスを調整できるCEMS(地域エネルギー管理システム)の構築を進めている(図3)。地域内には蓄電池も設置して、災害が発生しても「灯りと情報が途切れない安全・安心なまちづくり」を目指している。

図3 地域エネルギー管理システムの全体像(画像をクリックすると拡大)。出典:石巻市、東芝、東北電力

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