海外で作った「水素」が海を越えて日本へ、6年400億円のプロジェクト始動自然エネルギー(2/4 ページ)

» 2015年06月10日 07時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

水素サプライチェーン構築に向けた実証

photo NEDO 新エネルギー部 部長 橋本道雄氏

 これらを実現するためには、まず安定した水素の需給体制の構築が必要になる。同プロジェクトでは「大規模水素エネルギー利用技術開発」として、主に以下の2つの点について、開発プロジェクトを進める。これらの取り組みにより「2030年頃に世界に先駆けて本格的な水素サプライチェーンを構築する」(NEDO 新エネルギー部 部長 橋本道雄氏)。またエネルギー供給システムの柔軟性を確保しエネルギーセキュリティの確保にも貢献するという(図2)。

  1. 未利用エネルギー由来水素サプライチェーン構築:水素の安定的な供給システムの確立に向け、海外の未利用資源を活用した、水素の製造、貯蔵・輸送、国内における水素エネルギーの利用までをチェーンとして構築する。そのための技術開発を行うとともに、チェーンとしての運用技術の開発と実証を行う
  2. 水素エネルギー利用システム開発:水素を燃料電池以外に利用する需要を創出するため、水素を燃料とするガスタービンなど、技術開発を進める。水素を燃料として既存の燃料と同等の発電効率、耐久性、環境性を満たす混焼技術や水素発電を組み込んだエネルギーシステム技術の開発や実証などを行う
photo 図2:大規模水素エネルギー利用技術開発の概要図(クリックで拡大)※出典:NEDO

 「未利用エネルギー由来水素サプライチェーン構築」では、川崎重工業(以下、川崎重工)、岩谷産業、電源開発が参画する「未利用褐炭由来大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業」と、千代田化工建設が参画する「有機ケミカルハイドライド法による未利用エネルギー由来水素サプライチェーン実証」の2つのプロジェクトが認証を受けた。

 また「水素エネルギー利用システム開発」では、大林組と川崎重工が参画する「水素CGS(コージェネレーションシステム)活用スマートコミュニティ技術開発事業」と、三菱日立パワーシステムズ、三菱重工業が参画する「低炭素社会実現に向けた水素・天然ガス混焼ガスタービン発電設備の研究開発」の2つのプロジェクトが認証を受けている(図3)。NEDOではプロジェクトの3分の2までの予算について補助金を出す予定としており「初年度はプロジェクト合計で20.5億円の予算を用意。6年間のプロジェクトでは合計で400億円程度の事業規模だと想定している」と橋本氏は述べている。

photo 図3:大規模水素エネルギー利用技術開発の4つのプロジェクト(クリックで拡大)※出典:NEDO

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