山のふもとにメガソーラー、首都圏へ再生可能エネルギーを送るエネルギー列島2015年版(10)群馬(2/2 ページ)

» 2015年06月23日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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メガソーラーを造って農地を増やす

 群馬県では自治体による再生可能エネルギーの導入プロジェクトが活発だ。県が運営する発電所は水力が31カ所と多く、太陽光が2カ所、風力が1カ所ある。太陽光では東部の板倉町で2013年に運転を開始した「板倉ニュータウン太陽光発電所」の規模が大きい(図5)。

図5 「板倉ニュータウン太陽光発電所」の位置(上)、全景(下)。出典:群馬県企業局

 板倉ニュータウンは総面積が200万平方メートルの広さで開発を始めたものの、計画したほど需要がなく、残った土地に県みずからがメガソーラーを建設した。2つの地区に分かれて合計2.3MWの発電能力で、年間の発電量は250万kWhを見込んでいる。一般家庭で700世帯分の電力になり、板倉町の総世帯数(5400世帯)の1割強に相当する。

 メガソーラーの周辺には数多くの住宅が建っていることから、太陽光パネルの設置方法などに注意を払った。パネルからの反射光の影響が住宅に及ばないように、設置角度を8〜9度に設定してパネル面を水平に近い状態に保った(図6)。さらに反射光が分散する特性のある化合物系の太陽光パネルを採用して、まぶしさを抑える効果を高めた。

図6 太陽光パネルの設置状態(左)、雑草防止用のムカデ芝(右)。出典:群馬県企業局

 敷地内の雑草を防止する対策は、ムカデ芝やクローバーで地面を覆う方法をとった。化学物質を含む除草剤を使わないようにして環境の保全に努める。このほかにもメガソーラーに併設するパワーコンディショナーなどの装置類を群馬県産の木材で囲って景観に配慮している。

 地域の産業を活性化する点では、昭和村に隣接する沼田市で建設が始まった営農型のメガソーラーも注目だ。市が所有する山林の一部を使って、太陽光発電と同時に農業に取り組む(図7)。4万平方メートルの用地に支柱を立てて、合計1万1000枚の太陽光パネルを設置したうえで、パネルの下で農作物を栽培することになっている。

図7 「沼田市利根町太陽光発電所」の建設予定地。出典:沼田市環境課、国際ランド&ディベロップメント

 4月から建設工事が始まっていて、7月に運転を開始する計画だ。発電能力は1.1MWを予定している。農作物にも日光が十分に当たるように、小さな太陽光パネルを間隔を空けて設置する方式である。今のところ農作物の種類は明らかになっていないが、沼田市では高原の気候を生かしてレタスやトウモロコシなどの栽培が盛んに行われている。

 恵まれた立地条件を生かしながら、市場の大きい首都圏に向けて農作物と電力の供給量を増やして地域の活性化を図る。太陽光発電の導入量は毎年2倍以上に拡大して、全国でも第9位の規模に拡大した(図8)。さらに小水力とバイオマスを加えて、再生可能エネルギーを首都圏に供給する役割がますます大きくなっていく。

図8 固定価格買取制度の認定設備(2014年12月末時点)

*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −関東・甲信越 Part1−」をダウンロード

2016年版(10)群馬:「エネルギー自給率40%超へ、営農型の太陽光発電にも挑む」

2014年版(10)群馬:「日本で最高に暑い地域に、先駆けのメガソーラーが集まる」

2013年版(10)群馬:「利根川の流域に広がる水力発電、世界最大級の揚水式から小水力まで」

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