山にメガソーラー、街で水力とバイオマス、海では風力と波力も有望エネルギー列島2015年版(12)千葉(1/2 ページ)

千葉県の山中に巨大なメガソーラーが相次いで生まれている。東京湾を埋め立てるための土砂を採取した跡地やダムの水上にも建設中だ。都市部には水道設備を利用した小水力発電に加えて、廃棄物を燃料に使うバイオマス発電が広がる。太平洋側の沖合では洋上風力と波力の調査も始まった。

» 2015年07月07日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 今から40年前にさかのぼる1970年代のこと、東京湾の沿岸部を埋め立てる工事に必要な大量の土砂が千葉県の山から切り出された。当時は200メートルの高さがあった山がなくなり、その場所には広さが200万平方メートルの跡地が残ったまま長い年月を経過した。

 ようやく2013年になってから、跡地全体の半分にあたる100万平方メートルを2つに分割して、それぞれの区画に関東で最大級のメガソーラーを建設するプロジェクトが始まった。そのうちの1つは「富津(ふっつ)ソーラー発電所」として2014年7月に運転を開始している(図1)。

図1 「富津ソーラー発電所」の全景。出典:富津ソーラー

 44万平方メートルの用地に、16万枚の太陽光パネルを設置した(図2)。発電能力は40.4MW(メガワット)に達して、現在のところ関東では最大のメガソーラーである。年間の発電量は4200万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1万1700世帯に相当する。富津市の総世帯数は1万8000世帯で、全体の3分の2をカバーできる電力源になる。

図2 「富津ソーラー発電所」の北側(写真では上の方角)に隣接して同規模のメガソーラーが建設中。出典:レノバ

 隣接する区域でもメガソーラーの建設工事が進行中だ。用地の広さが52万平方メートルあるため、発電能力は富津ソーラーを上回る42.2MWを予定している(図3)。2016年1月に運転を開始して、年間の発電量は1万2000世帯分にのぼる見込みだ。2つのメガソーラーの発電量を合わせると、富津市の全世帯が1年間に消費する電力量の1.3倍に匹敵する。

図3 隣接地に建設中の「富津太陽光発電所」。出典:日本GE

 メガソーラーが立地する千葉県と富津市には、税収入だけでも合計で約1億円が20年間にわたって毎年もたらされる。加えて金額は不明ながら土地の賃貸料も入る。山が消えてしまったことは残念だが、地域に貢献する再生可能エネルギーの供給基地に生まれ変わった。

 同様に東京湾から近い場所にある山の近くに、千葉県の企業庁が運営する大きなダムがある。湾岸地域に工業用水を供給するために1965年に造られた「山倉ダム」だ。広いダムの水面のうち3分の1を利用して、フロート式のメガソーラーを建設する計画が始まっている(図4)。

図4 「山倉ダム」の全景と太陽光パネル設置領域(上)、太陽光パネルの設置方法(下)。出典:千葉県企業庁、京セラ、東京センチュリーリース

 18万平方メートルに及ぶ水面の上に、5万枚の太陽光パネルを設置する計画である。発電能力は13.4MWになって、水上に設置するメガソーラーでは世界でも最大の規模になる。2016年3月に運転を開始する予定で、年間の発電量は1560万kWhを想定している。一般家庭で4300世帯分に相当する電力が、ダムの水面で太陽光によって生まれる。

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