島根県が7年ぶりに再生可能エネルギーの推進計画を刷新して、2019年度に県内の電力消費量の30%以上を再生可能エネルギーで供給する目標を決めた。地域の特性を生かして風力とバイオマスを伸ばしながら、太陽光と小水力も加えて5年間で発電量を1.4倍に拡大する方針だ。
島根県は新たに策定した「再生可能エネルギー及び省エネルギーの推進に関する基本計画」の中で、地域を活性化させることを最大の目的にして再生可能エネルギーの導入目標を設定した。単に導入量を増やすのではなく、地域の資源を生かして雇用を創出できることを目指す。特に重点を置くのは小水力・バイオマス・陸上風力の3つだ。
2019年度までの5年間に、再生可能エネルギーによる発電量を10.9億kWh(キロワット時)から15.6億kWhへ、1.4倍に増やす(図1)。その結果、県内の電力消費量が変わらない前提で、2019年度には30.4%の電力を再生可能エネルギーで供給できるようになる。
種別に見ると発電量が最も増えるのは陸上風力で、出力・年間発電量ともに約2倍の規模に拡大する。島根県では年間を通して日本海から吹く風を利用できる利点があり、現時点でも国内最大の風力発電所「新出雲ウインドファーム」が78MW(メガワット)の出力で運転している(図2)。
新たに出力48MWの「ウインドファーム浜田」が29基の風車を配置して建設中で、2015年度内に運転を開始する予定だ(図3)。さらに県内の3カ所で合計66MWの風力発電所の開発計画が進んでいる。
バイオマス発電では地域の森林に残る用途のない木材を燃料に利用した発電所が2015年度内に2カ所に誕生する。1カ所は「江津バイオマス発電所」で、すでに出力12.7MWで7月に運転を開始した(図4)。もう1カ所が稼働すると、県内の林地残材の8割を消費することができて、年間の発電量も一気に1.2億kWh増える。
このほかに小水力発電では農業用水路やダムからの放流を利用した導入計画を検討中だ。水量や落差の小さい場所にも小規模なマイクロ水力発電を推進して、LED防犯灯などの電源に利用できるようにする。費用の一部を県が助成して5年間に50カ所の集落に導入していく。
島根県には中国地方で唯一の「島根原子力発電所」がある。2014年には地元の住民が原子力からの脱却と再生可能エネルギーの拡大を推進するために新しい条例の制定を求める動きもあった。県知事は実効性がないことを理由に否定的な意見を表明して、その後の知事選で当選している。
こうした経緯から実効性のある再生可能エネルギーの推進計画をとりまとめる必要があった。島根県では2008年に「島根県地域新エネルギー導入促進計画」を策定したが、2011年の福島第一原子力発電所の事故が発生して以降、エネルギーに関する基本計画を改定していなかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.