京セラはこれまでのADR実証の成果を受け、2015年8月から新たなプロジェクトを開始している。これは新エネルギー導入促進協議会が公募する「平成26年度次世代エネルギー技術実証事業費補助金」の「ネガワット取引に係るエネルギーマネジメントシステム構築と実証」の事業者に京セラが採択されものだ。京セラの他にも多くの企業がアグリゲータとして参加している。
この実証において京セラが管理している需要家は、関東圏のスーパー8店舗、東京コミュニティーの研究センター、東京都市大学 横浜キャンパス、パナソニックデバイスSUNXの2工場。東京、中部、関西と異なる3つの電力管内にある各拠点の節電を、京セラがアグリゲータとして取りまとめている。
2014年の実証と異なるのは、ADRのネガワット取引への適用に焦点を当てている点だ。ネガワット取引とは、節電した電力量(ワット)の削減分(ネガティブ)を売買できる仕組みのこと(図3)。例えば電力会社からのDR要請に応じて、アグリゲータが取りまとめている需要家の節電を行ったとする。この場合、節電した電力量に応じて電力会社からアグリゲータには報奨金が支払われ、この一部がアグリゲータから節電に協力した需要家にわたることになる。
今回の実証でポイントとなるのはこのネガワット取引を最大化するために、電力会社がDR要請を発令した際に求める節電量を、ADRで素早く正確に実現できるかという点だ。
今回の実証では東京電力管内のスーパー8店舗と、関西電力管内のパナソニックデバイスSNUXの工場がADRによる空調機器の自動制御に対応。これらの需要家と協力して、節電開始の10分前という急なDR要請への対応を実証している。
京セラは事前に東京電力と、2015年8月においてはDR要請があった場合に1時間当たり48kWの電力を削減するという契約を結んでいる。つまりDR要請から10分以内に、東京電力管内のスーパー8店舗を合計して48kWの電力を削減する準備を整えなくてはならないことになる。
しかし10分前という急な要請に対し、全ての需要家が常に求められた節電量を実現できるわけではない。そこで京セラが電力会社との契約容量を達成するために取り組んでいるのがディスパッチ制御だ。これは複数の需要家を適宜組み合わせることで、契約した節電量を達成する技術である(図4)。
例えばDRを実施する1時間のうち、前半の30分は1つの店舗のみで48kWの節電量を確保する。後半の30分については、複数の店舗を組み合わせて48kWを構成するといったかたちになる。こうした柔軟な制御を可能にすることで、急なDR要請にも対応していく狙いだ。
実証の中で2015年8月中に東京電力から発令された10分前予告のDR要請は4回あったという。京セラはこのうち2回は48kWを達成できたとしており、今後はこの精度を高めることを目標に引き続き実証を継続していくとしている。
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