NEDOはフランスのリヨン市で、ビル内の消費量を上回るエネルギーを生み出す「ポジティブ・エナジー・ビルディング(PEB)」の実証運転を開始した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、フランスのリヨン市で、太陽光発電や蓄電池、蓄熱材などを活用し、エネルギーマネジメントシステムで管理することで、ビル内の消費量を上回るエネルギーを生み出す「ポジティブ・エナジー・ビルディング(PEB)」の実証運転を開始した。同ビルは「HIKARI(ヒカリ)ビル」と名付けられており、実証成果を今後幅広く展開していく(図1)。
持続可能でエネルギー効率の高い街を実現するためには、エネルギーの生産面で再生可能エネルギーの導入を図る一方、消費面で街単位、ビル単位、世帯単位の各段階でエネルギーの消費状況を認識し、効率的な使用を促進する仕組みが求められている。また、エネルギー需給面だけでなく、都市交通など多様な面からの都市のスマート化が必要だ。さらに新しい街作りに加え、歴史ある既存の街においてもスマート化の推進が要求されている。
フランスは、全ての公共の新築ビルをPEBにする目標を掲げている。今回NEDOが参加した実証実験では、高効率太陽光発電パネルや蓄電池、吸収式冷凍機、LED照明システム、蓄熱材などを設置し、BEMSおよびHEMSの活用で最適にエネルギー管理を行うというもの。今回の実証成果により得た知見により、今後フランス国内で建設が増えるPEBでの活用を進めていく(図2)。
フランス第2の都市であるリヨン市は、リヨン都市共同体(グラン・リヨン)が「コンフルエンス地区の都市再開発」を進めており、NEDOは2011年からグラン・リヨンと連携して、スマートコミュニティ実証事業を実施してきた。
同事業は日本の技術力を幅広く生かした4つのTASKで構成されている。今回の実証運転開始はTASK1にあたる再生可能エネルギーや蓄電池などを積極的に導入し、ビル内の消費量を上回るエネルギーを生み出すPEBの構築の実証だ。これで、既に開始しているTASK2(太陽光発電を活用したEV管理システムとEVカーシェアリングシステムの導入)、TASK3(既存住宅におけるエネルギー消費量の「見える化」で、住民の省エネルギー行動の促進)、TASK4(TASK1、2、3で収集するエネルギーの情報を取りまとめ、地域全体で活用するための指標を提示するコミュニティマネジメントシステム)と連携し、NEDOが推進するリヨンスマートコミュニティ実証事業を構成する全てのTASKが始まったことになる。
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