夏の電力供給に太陽光と風力が貢献、東京電力の管内で377万kWに:電力供給サービス(2/2 ページ)
震災前後の供給力を比較すると、過去5年間に電源構成が大きく変化した様子が明確にわかる。2010年には全体の2割近くを原子力が占めていたが、その分は2015年の需要が1000万kW以上も減少したことで相殺できている(図3)。
図3 震災前後の夏の供給力の比較。出典:東京電力
一方で火力発電はガス(LNG:液化天然ガス、LPG:液化石油ガス)と石炭が増えた代わりに石油が大幅に減って、合計すると震災の前後でも同程度の水準に収まった。節電による需要の減少と太陽光による供給力の増加で、原子力の運転停止分を問題なくカバーできている。
東京電力の分析では、2010年の夏と比べて2015年の最大電力は平日の平均値で950万kW程度も少なくなった(図4)。2014年の夏は880万kW程度の減少だったことから、この1年間で70万kWの節電効果が上積みできたと言える。
図4 震災前後の夏の最大電力の比較。出典:東京電力
今後も空調と照明をはじめ電気製品の消費電力は低下して電力の需要は減り続ける。同時に太陽光を中心に再生可能エネルギーによる電力の供給力が増えて、火力発電に対する依存度は下がっていく。この傾向は東京電力に限らず、全国の電力会社に共通する。電力を安定供給する観点で原子力の必要性が薄れたいま、放射能汚染のリスクを負ってまで再稼働する理由を政府と電力会社は国民に改めて説明しなくてはならない。
- 大市場の電力販売量が7月に激減、東京5.4%減、関西4.3%減
7月の電力の販売量は地域によって大きな差が出る結果になった。東京電力の管内は前年比で5.4%減り、関西電力の管内でも4.3%減った。特にオフィスで利用する業務用の電力が7%前後の大幅な落ち込みになった。一方で東北・北陸・沖縄の3地域は前年7月の販売量を上回った。
- 再生可能エネルギーに逆風、原子力発電の電力が増える九州の未来
九州電力が川内原子力発電所の1号機を再稼働させて、8月14日から送電を開始する。9月上旬には最大89万kWの電力を供給する予定で、年内には2号機も再稼働する見通しだ。九州では需要の少ない春に供給力が過剰になり、発電設備の出力を抑制する可能性が高まるが、原子力は対象外である。
- 電力の融通がないと停電の危険!?、予備率3%を切る関西と九州の夏
沖縄を除く9つの地域で夏の電力需給の見通しがまとまった。需要が最大になる8月には関西の予備率が0.8%まで下がり、九州ではマイナス2.3%と完全に電力が不足する状況になるため、他地域からの融通に頼る。残る7つの地域では予備率5%以上を確保できて、地域間の格差が非常に大きい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.