政府が2030年のエネルギーミックス(電源構成)を検討するにあたって、地熱発電の導入見込量を試算している。それによると環境面の規制を緩和すれば、発電能力が10万kW(キロワット)級の大規模な地熱発電所を2倍に拡大できる見込みだ(図3)。
そのほかの中小規模の発電所や既存の発電所を加えると、国内の地熱発電は2030年までに140万kWに拡大して、年間の発電量は98億kWh(キロワット時)になる。政府は日本全体で2030年に必要な発電量を1兆650億kWhと想定しているため、地熱は1%弱に過ぎない。それでも再生可能エネルギーの中ではバイオマス発電とともに出力が安定していることから、少しでも増やせればメリットは大きい。
2012年7月に固定価格買取制度が始まって以降も、地熱発電の開発プロジェクトは他の再生可能エネルギーに比べて進んでいない。制度の開始後に運転を開始した地熱発電所は規模が小さく、ほとんどは国立・国定公園の外で実施している(図4)。
発電に適した150度以上の地熱を含む貯留層は、火山地帯を中心に国立・国定公園の地下に存在するケースが多い。環境省は固定価格買取制度が始まる直前の2012年3月に「国立・国定公園内における地熱発電の取り扱いについて」を策定して、第2種・第3種特別地域と普通地域では地熱発電所の建設を個別判断で認めるように通知を出した。
この時の規制緩和によって、第2種・第3種特別地域でも地熱発電の開発プロジェクトが徐々に増えてきた(図5)。新たな規制緩和で第1種特別地域の周辺でも開発が可能になり、地熱資源が豊富な北海道と東北を中心に大規模な地熱発電プロジェクトが広がる見通しだ。
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