太陽光発電の勢いが止まらない、ダムや池もメガソーラーになるエネルギー列島2015年版(28)兵庫(3/4 ページ)

» 2015年10月27日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

自動車道の近くにも木造メガソーラー

 兵庫県は全体の面積のうち3分の2が森林のため、間伐で発生する大量の木材の処理が課題になっている。用途のない木材をメガソーラーの架台に利用できれば、林業の収入増加につながり、間伐による森林の保全を推進しやすくなる。内陸部の佐用町(さようちょう)でも、町と民間企業が共同で木造のメガソーラーを2014年11月に稼働させた。

 町内を走る中国自動車道を建設した後の残土の処分地に、2万枚の太陽光パネルを設置した(図5)。このパネルの架台は木造建築の技術で組み上げたものだ。県内産を中心に、長さが3〜4メートルの木材1万4000本を使った。いずれメガソーラーが運転を終了したら、解体して燃料やパルプとして再利用する。

図5 「佐用・IDEC申山太陽光発電所」の全景(上)、木造の架台に設置した太陽光パネル(下)。出典:佐用町、IDEC

 佐用町から東へ中国自動車道を40キロメートルほど走ると、今度は道路の南側の斜面に太陽光パネルが現れる(図6)。直線区間の1キロメートル以上にわたって、合計2000枚のパネルが並んでいる。日本高速道路保有・債務返済機構が公募して、兵庫県内の園芸土木会社が設置した。発電能力は0.5MWで、150世帯分の電力になる。規模は小さくても、エネルギーの地産地消を推進する県の構想に合致する。

図6 中国自動車道の法面に設置した太陽光パネル(上)、遠景(下)。出典:森口園芸土木

 兵庫県では大規模なメガソーラーだけではなくて、各地域の集落ごとに小規模な発電設備を展開する取り組みが始まっている。2014年度に開始した「エネルギー自立のむら」と呼ぶプロジェクトで、再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせて災害対策に生かす狙いだ。

 その第1号が、県のほぼ中央に位置する朝来市(あさごし)で2015年1月に完成した。4年前に廃校になった小学校の校舎の屋根に192枚の太陽光パネルを設置して、発電した電力は蓄電池に充電できるようになっている(図7)。建設費の半分を県が補助して、残り半分を各集落に無利子で貸し付ける制度だ。

図7 小学校の校舎だった建物の屋根に設置した太陽光パネル(画像をクリックすると全景を表示)。出典:兵庫県企画県民部

 平常時は売電して貸付金の返済にあてる一方、災害時には施設内の自立運転コンセントから電力を供給することができる。太陽光発電の出力は最大48kWで、蓄電池の出力は10kWある。災害時の昼間は余剰電力を蓄電池に貯めて、夜間になると施設の照明に使う。地域の避難所として停電にも耐えられる施設になった。この地域を含めて県内7カ所の集落が認定を受けて設備の導入を進めている。

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