省エネを革新する次世代素材「CFRP」、リサイクル課題に挑むベンチャー登場省エネ機器(1/2 ページ)

鉄に比べ4分の1の軽さでありながら、10倍以上の強度を持つ炭素繊維強化樹脂。次世代自動車や風車などのエネルギー効率の向上に貢献する素材として利用が進み始めたが、リサイクルに課題が残る。「TOKYOイノベーションリーダーズサミット」で、ベンチャー企業のカーボンファイバーリサイクル工業は同社が展開するCFRPのリサイクル技術をアピールした。

» 2015年10月28日 13時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 さまざまな製品の軽量化に貢献する新素材として炭素繊維強化樹脂(CFRP)が注目されている。CFRP鉄に比べ4分の1の軽さでありながら、10倍以上の強度を持つ。そのため軽量化による燃費性能といったエネルギー効率の向上に大きく貢献する素材として、一部の自動車や航空機などに加え、風車のブレードなどにも利用されはじめている。トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI(ミライ)」の部品にも東レ製のCFRPが使われている(図1)。

図1 東レ製のCFRPを利用している「MIRAI」の部品 出典:東レ、トヨタ自動車

 軽量かつ高剛性とメリットも多いCFRPだが、普及に向けた課題も多い。1つが高価であり、生産性も低いという点。そしてもう1つが、CFRPを利用した部品製造の段階で発生する大量の廃材や、最終製品に利用されているCFRPの最適なリサイクル技術が確立しきっていないという課題だ。高価であるとはいえ量産技術の開発も進んでおり、CFRPは今後さまざまな領域での利用が急拡大していくと見込まれる。一方そのリサイクルについては、現時点では埋め立て処分が一般的となっている状況だ。

 2015年10月26〜27日に東京都内で開催された「第3回 TOKYOイノベーションリーダーズサミット」のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)ブースに出展していたベンチャー企業のカーボンファイバーリサイクル工業(岐阜県美濃加茂市)は、同社のCFRPのリサイクル技術をアピールしていた。

CFRPから炭素繊維のみを取り出す

 CFRPの製造はさまざまな手法があるが、基本的には炭素繊維と樹脂を加熱することで一体化させている。カーボンファイバーリサイクル工業はNEDOからの助成を受け、岐阜大学と共同でCFRPから炭素繊維を取り出せるシステムを開発。繊維状を維持したまま取り出すことが可能で、さまざまな形で再利用できるという(図2)。

図2 CFRPから取り出した糸状の炭素繊維(左)とフレーク状の繊維(右)(クリックで拡大)
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