電力会社の収益改善が加速、上半期の営業利益が1兆円を超える電力供給サービス(1/2 ページ)

2015年度上半期の電力会社の決算がまとまった。10社を合計した売上高は前年から2.8%減少したものの、営業利益は2倍に増えて1兆円を突破した。原油やLNGの輸入価格が1年間で5割近く下がった効果によるものだ。原子力発電所を再稼働しなくても利益を出せる状況になってきた。

» 2015年11月02日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 電力会社10社の売上高を合計すると9兆8570億円で、前年から2.8%減少して10兆円を割り込んだ。その一方で営業利益は2倍以上に増えて1兆円を超えた。前年度の上半期に1社だけ赤字だった九州電力も黒字に回復した。一部の地域を除いて販売電力量が減少しているにもかかわらず、収益の改善が急速に進んでいる(図1)。

図1 2015年度上半期(4〜9月)の売上高・営業利益(いずれも連結決算)と販売電力量

 最大手の東京電力が3850億円の営業利益を上げたのをはじめ、中部電力が2276億円、関西電力が1757億円で、3社ともに前年度から1000億円を超える増益を果たした。ただし各社ともに売上高の減少が続いていて、決して楽観できる状況ではない。東京電力では販売電力量の減少に加えて燃料費調整額も大幅に減ったことで、上半期の収入が2000億円以上も少なくなった(図2)。

図2 東京電力の収支(単独決算)。出典:東京電力

 これに対して支出の3割以上を占める燃料費が4340億円も減って、売上高の減少分を大幅に上回った。原油とLNG(液化天然ガス)の輸入価格が1年間に半値近くまで下落したためだ(図3)。為替レートは2割ほど上昇したものの、それ以上の価格低下で各社の燃料費を大きく押し下げた。

図3 原油とLNGの輸入価格の変動。CIF:Cost, Insurance & Freight(海上輸送運賃と保険料を含む)。出典:東京電力

 化石燃料の輸入価格は2015年度に入っても低い水準で安定していて、下半期も同程度で推移する見通しだ。今後も価格が上昇する要因は少なく、電力会社の燃料費は販売電力量の減少と火力発電の高効率化に伴って下がる可能性が大きい。

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