震災後に全国各地で原子力発電所の運転を停止したことにより、電力会社の収益は一気に悪化した。火力発電所の稼働を増やしたことで燃料費が増加したためだが、その後の内部コストの削減と燃料費の減少によって、原子力発電所を再稼働しなくても利益を上げられる状態になってきた。
とはいえ売上高の大半を占める販売収入が減り続けているために、このままでは再び赤字に転落するおそれがある。関西電力では2015年度の上半期に販売収入が600億円以上も減少したが、そのうち430億円が販売量の減少によるものだ(図4)。4月に電気料金を値上げした効果は490億円にとどまり、収入の増加につながらなかった。もはや値上げしても収入が増えない構造になっている。
ようやく黒字に回復した九州電力でも状況は変わらない。2013年5月に電気料金を値上げしたことで、2013年度と2014年度には販売収入が大きく伸びた(図5)。しかし2015年度の上半期には前年度から300億円以上も減少した。それでも売上高が0.2%とわずかながら増加したのは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度に伴う収入が650億円もあったためだ。
加えて燃料費が大幅に減った効果で、2011年度から続いていた赤字を解消することができた。原子力発電所が再稼働したのは8月中旬だったことを考えると、たとえ再稼働しなくても上半期の黒字を確保できた可能性が大きい。今後さらに火力発電が減って燃料費は縮小するため、2015年度の通期でも営業利益を出せる見通しだ。
黒字に回復したことで電気料金の値下げが期待されるが、販売収入が想定以上に減少していて、先行きが見通せない状況にある。九州電力は2015年度の業績予想を7月、9月、10月の3回にわたって修正している。1回目は再生可能エネルギーの収入拡大による上方修正だったが、その後の2回は販売収入の減少が想定を上回って進んだことによる下方修正だ。同じ傾向が続くと、下半期にも業績予想の修正は避けられなくなる。
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