関西電力と九州電力も黒字に、電力会社10社で第1四半期に4700億円の増益:電力供給サービス
電力会社の第1四半期の決算がまとまり、沖縄を除いて9社が営業黒字を記録した。4年連続で赤字が続いていた関西電力と九州電力も四半期ベースで黒字に転じた。原油とLNGの輸入価格が2015年に入って下落した影響が大きい。ただし販売電力量は減少傾向が続き、楽観できる状況ではない。
第1四半期(4〜6月)の決算では東京・関西・中部の上位3社が軒並み前年比で1000億円を超える営業増益を果たした点が目を引く。中でも関西電力は1236億円の増益になり、4年ぶりに黒字に復活した。10社の売上高を合計すると前年から0.9%しか伸びていないものの、本業のもうけを示す営業利益は4713億円も増えている(図1)。
図1 2015年度の第1四半期の売上高と営業利益(いずれも連結決算)、販売電力量
各社の利益が回復した最大の要因は、原油とLNG(液化天然ガス)の輸入価格が直近の6カ月間に半分程度まで下落したことによる(図2)。電力会社は燃料の輸入価格を電気料金に上乗せすることができるが、料金に反映するのは3〜5カ月後になる。このため4月までは上乗せ分の「燃料費調整単価」が高いままで、実際の燃料費を上回る収入を得られる状況だった。
図2 燃料の輸入価格の推移(全日本通関価格。画像をクリックすると拡大)。原油は米ドル/バレル、一般炭とLNGは米ドル/トン。出典:東京電力
東京電力の収入と支出の内訳を見ると、燃料費調整額は前年から460億円の減少に対して、燃料費は2231億円も減っている(図3)。この差額だけで1771億円にのぼり、営業利益の8割以上を占める。ただし第2四半期からは燃料費調整額が大幅に下がるため、燃料費による増益効果は小さくなる。
図3 東京電力の収支の増減(単独決算。画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力
関西電力も同様だ。燃料費調整額による売上高の減少は250億円で、燃料費は1035億円も少なくなった。関西電力は企業向けの電気料金を4月から、家庭向けを6月から値上げしたが、販売電力量が減少して売上高は微増にとどまった。次の第2四半期には家庭向けの値上げ分が3カ月間にわたって寄与するため、売上高も増える見通しだ。
図4 関西電力の収支の増減(単独決算。画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力
10社のうち8社が増益を果たした中で、北陸電力と中国電力は減益になった。北陸電力は販売電力量が増えたものの、石炭火力の定期点検に伴って燃料費の高い石油火力の発電量が増加したことで収支が悪化した。中国電力は産業用を中心に販売電力量が減り、売上高が1.7%の減少になった影響が大きい。沖縄電力は販売電力量が3.8%も増えて好調だったが、燃料費調整額の減少で売上高が伸びず、営業赤字になった。
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