トヨタが描く2030年とは、太陽光や風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーを利用したCO2フリーな水素製造インフラが整備されている社会。そしてこうした社会が実現していれば、同時に水素エネルギーの地産地消も可能になっているという想定だ。
ではこうした未来の社会の中で、クルマ(FCV)はどういった役割を担うのだろうか。トヨタがFCV Plusで提案するのは、FCVが電力を生み出すエネルギーインフラの一部になるというビジョンだ(図2)。
具体的にはその地域で生成した水素とFCVの燃料電池スタックを利用して発電し、その電力を自宅で利用したり、FCVを利用していない時にも発電して地域電源として活用したりすることで、クルマにエネルギーインフラとしての役割を担わせる。災害などの非常時にもFCVを分散電源として利用することで、インフラを支えるというコンセプトだ。
現在のクルマはエネルギーを消費する存在といえる。トヨタは水素社会の実現や、FCVそのものの技術革新により、将来はクルマがエネルギーを作り出し、さらに分散電源の1つとして社会インフラを支える存在へと変化していくことで、「クルマはもっと愛される存在になれる」というビジョンを込めたという。動いていない時のクルマにも新たな価値を持たせるという考えだ。
こうしたビジョンに合わせ、FCV Plusにはリヤタイヤ側面とフロント床下には非接触給電パネルを内蔵し、外部給電も可能にするというコンセプトカーになっている。2030年ごろと少し先のコンセプトだが、既に電気自動車などでは分散電源としての利用も始まっており、現実性はある。課題はFCVや水素インフラの普及が軌道に乗るのかという点だろう。
今回のTMS2015では多くの自動車メーカーが自動運転技術の開発に注力する姿勢を見せるなど、近年、移動体としての自動車の在り方を再定義するような流れが生まれ始めている。こうした動きとともにトヨタがFCV Plusで示したように、エネルギーの観点からも変化が進んでいきそうだ。
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