東京電力が福島県で進めている「石炭ガス化複合発電」のプロジェクトが着工に向けて最終局面に入った。建設に必要な環境影響評価の手続きが第3段階まで進み、2016年9月に県内の2カ所で工事を開始できる見通しだ。CO2排出量を抑えた石炭火力発電所が2020〜21年に運転を開始する。
東京電力は福島県の復興に向けて、世界で最先端の石炭火力発電設備を県内2カ所に新設するプロジェクトを推進している。いずれも太平洋沿岸にある既存の火力発電所の構内に建設する計画だ。1カ所は「広野火力発電所」で、もう1カ所は東北電力などと合弁で設立した常磐共同火力が運営する「勿来(なこそ)発電所」である(図1)。
新設する発電設備には「石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)」を採用する。IGCCは石炭からガスを精製した後に、ガスと蒸気を使って2段階で発電することができる。現在の石炭火力で最新鋭の「超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)」から2世代先を行く先端技術だ(図2)。
IGCCでは発電効率が46%以上に達して、USCの40%を大幅に上回る。石炭の使用量とCO2(二酸化炭素)の排出量が1割以上も少なくて済む。さらに現在の石炭火力発電所で最も多く使われている「亜臨界圧(Sub-C:Sub-Critical)」の設備と比べると、CO2の排出量は2割程度を削減することができる(図3)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.