東京大学の研究チームが有機薄膜による太陽電池の新しい製造方法を開発した。薄くて透明な太陽電池を構成する電極の層を減らして製造工程を簡略化できる。電極の素材に従来のインジウムに代わってニオブを採用した。レアメタルの中でも生産量が多くて価格と供給量が安定している。
有機薄膜で作る太陽電池は薄いフィルム状になるため、窓ガラスなどに設置することができる。次世代の太陽電池として世界各国のメーカーや大学・研究機関などが開発中だ。東京大学の研究チームが開発した有機薄膜太陽電池は、従来と違う新素材を採用した点が特徴である。
有機薄膜太陽電池は透明の基板の上に1対の電極を組み合わせて作る(図1)。電極のあいだには有機化合物で作った発電層があり、太陽光が当たると電子が移動して電気が流れる仕組みだ。
従来の有機薄膜太陽電池では電極の素材に合金の1種である「酸化インジウムスズ」を使うが、研究チームは「ニオブドープ酸化チタン」を採用した(図2)。インジウム、ニオブ、チタンはいずれも生産量が限られるレアメタルだ。このうちインジウムは需要が多いために、価格が高くて供給量も不安定な面がある。ニオブとチタンで代替できればコストダウンにつながる。
加えてニオブドープ酸化チタンの表面をオゾンで酸化処理する手法により、有機薄膜太陽電池に必要な電子の輸送層を一体化することができた。電極の表面に導電性の高い酸化チタンが形成されて、電子だけを流す働きが生まれるためだ(図3)。従来の酸化インジウムスズを電極に利用する場合と比べて層が1つ少なくなり、積層の工程を減らすことが可能になる。
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