激戦区の関西電力エリアに、生協が低価格・低CO2で挑む:電気料金の新プラン検証シリーズ(14)(3/3 ページ)
いずみ市民生協が販売する電力はCO2排出量が少ないことも特徴の1つだ。電力の調達先を大和ハウスグループのエネサーブに決めて、CO2排出量の少ない電力を確保する(図8)。エネサーブはバイオマスや風力を含めて自社で発電所を運営するほか、他社からも再生可能エネルギーの電力を多く調達している。
図8 いずみ市民生協の電力供給体制。出典:大阪いずみ市民生活協同組合
電気事業者が販売する電力のCO2排出量を比較すると、エネサーブは2014年度の実績で電力1kWhあたりの排出係数が0.206(CO2換算キログラム)と低い。この排出係数は実際の排出量から再生可能エネルギーの電力を買い取った量などを引いた調整後の数値である(図9)。
図9 電気事業者のCO2排出係数(2014年度)。特定規模電気事業者はエネサーブだけを抜粋。代替値は過去5年間の全事業者の平均値。出典:環境省
全国の電力会社のCO2排出係数は調整後の数値で0.5〜0.8前後になっている。関西電力は0.523で、エネサーブの2.5倍だ。これから関西電力が原子力発電所を再稼働するとCO2排出係数は下がっていくが、販売量の2割を原子力で供給した場合でも0.4以下にはならない。エネサーブが低いCO2排出係数を維持すれば、関西電力よりも環境負荷の低い電力を供給し続けることができる。
いずみ市民生協が電力を供給する地域は生協の活動エリアに限定する。大阪府の南半分を占める25の市町村である(図10)。販売対象は約50万人の組合員で、この地域の全世帯数の37%に相当する。組合員にアンケート調査を実施した結果では、回答者の約7割が生協から電力を購入する意向を示している。
図10 いずみ市民生協の電力供給エリア。出典:大阪いずみ市民生活協同組合
いずみ市民生協は全国の生協の中で小売電気事業者に初めて登録を済ませた。全面自由化が始まる4月1日から電力の供給を開始する。今後は各地の生協も電力の小売に乗り出して、いずみ市民生協と同様に再生可能エネルギーを多く含む環境負荷の低い電力を販売する見通しだ。
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- “分かりやすさ”を全国展開、みんな安くなるKDDIの「au でんき」
2016年4月から始まる電力の小売全面自由化で注目なのが、大手通信キャリアの参入によるセット割引の提供だ。ソフトバンクに続いて、KDDIも「auでんき」の料金プランの内容を明らかにした。地域や使用電力量を問わず、KDDIの携帯電話(au)ユーザー全員に割引のメリットを訴求する特徴的なプランとなっている。
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原子力に依存しないエネルギー供給体制を推進する日本生活協同組合連合会が4月1日から、首都圏にある168カ所の事業所の電力をグループ企業からの調達に切り替える。契約電力の規模は2万kWにのぼり、年間の電力量は2万8000世帯分になる。太陽光やバイオマスの割合を高めていく。
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