期待高まるスマートハウスやZEH、政策の後押し充実も課題は多い省エネ機器(1/2 ページ)

三菱電機は、スマートハウスに関する技術説明会を開催し、ZEHやHEMSなどの可能性を示すとともに現状の課題について説明した。

» 2016年02月29日 11時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 国際的な地球温暖化対策に対する規制の高まりにより、日本でも政府が主導する省エネルギー対策が加速している。政府による家や家庭を対象とした省エネルギ―政策としては、住宅・建築物の「省エネルギ―基準(平成25年判断基準)」がある他、認定低炭素住宅制度、2020年のZEH規制などがある。

 住宅・建築物の省エネルギー基準は、従来の外皮断熱性能のみの基準から一次エネルギー消費量を指標とした建物全体の省エネ性能を評価する基準としたことが特徴。また、認定低炭素住宅とは、建物の一次エネルギー消費が、省エネ基準に比べて10%以上の削減となる住宅のことである。省エネ基準以上の断熱性能やCO2排出を抑える設備や処置が必要になる。

 ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」のことで、年間の一次エネルギー消費量がネットでゼロとなる住宅を指す。簡単に言い換えると、年間の電気の消費量に対し、太陽光発電などで同等以上の発電を行い、電力の足し引きがゼロになる住宅のことである。エネルギー需給の抜本的な改善につながる他、国際的な地球温暖化対策への取り組みへの貢献度も高いため、その実現には大きな期待が寄せられている。

 また、2012年に政府が発表した「グリーン政策大綱」では、2030年までにHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)を全世帯に普及させることなどを表明しており、政府の積極的な支援策が目立つ状況だ。

 三菱電機 リビング・デジタルメディア事業部 電材住設PV事業部 スマート事業推進部 事業推進グループ 担当部長の三島隆氏は「スマートハウスやZEHなどへの取り組みは企業などの提案の一方で、政府が積極的な支援を行っていることがポイントだ」と述べている。

山積する課題

 一方で、現実的には超えるべき課題はさまざまなものが残されている。

 例えばZEHは、政府の方針で2020年に「標準的な新築住宅」での実現が決められており、2030年には「新築の平均」でZEHを実現するとしている。新築住宅は基本的にZEHにしなければならないということである(関連記事)。

 2015年のZEH交付決定件数は230件だったのが、2020年にはZEH戸数は20万戸になるとの予測を示す。ただ、この予測は2019年と2020年に急進するものとなっており、その実現性はまだ分からない状況だ(図1)。

photo 図1 ZEH交付決定件数の内訳(クリックで拡大)出典:三菱電機

 この背景にはビルダーの技術力やノウハウの問題がある。ZEHは、電気の使用量と同等以上の発電をして、使用電気エネルギー量がゼロ以下となる家のことだが、ZEHの定義としてまずこのエネルギーの均衡の前提として「省エネルギー基準より20%のエネルギー使用量軽減」を実現しなければならないとされている。この実現を行うためには家庭内設備だけでなく、建築物としての躯体をどう設計するかということが大きな要素となっている。

 この躯体の設計などの技術力やノウハウについては、大手ハウスメーカーは既に確立しつつあり、既に商品として展開をし始めている。一方で、地域の工務店ではこうしたノウハウを持っていないところも多く、2020年に20万戸という目標については、これらの技能習得が大きな鍵を握っているといえる。

 三島氏は「大手ハウスメーカーの新築着工戸数は大体4分の1程度。残りの4分の3は地域の工務店などが担っている。これらをどう支援していくのかというのは今後大きな課題になると見ている」と述べている。

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