転機を迎える太陽電池市場、ZEHとソリューション提案に活路太陽光(1/4 ページ)

太陽電池市場が転機を迎えている。固定買取価格制度による買取価格の低廉化が進み新規受注が減少傾向にある他、好条件のメガソーラー立地は減少。太陽光パネルそのものの価格競争も激化しており、太陽電池モジュールメーカーの経営環境は厳しさを増している。こうした中でメーカー各社の戦略も多様化してきている。「PV EXPO 2016」での各社の方向性をレポートする。

» 2016年03月16日 09時00分 公開
[三島一孝スマートジャパン]

 太陽電池市場は転換期を迎えている。2012年のFIT(固定価格買取制度)開始以降、普及が加速した太陽電池市場だが、固定買取価格制度(FIT)の価格見直し(関連記事)や、出力制御を進める動きが強まっている点などから、伸び率は下がってきている。特に金額ベースでの市場規模は2015年をピークに減少ペースになるとされ、パネル単体のビジネスでは厳しくなることが予測されている。

 これらの影響は各社の決算状況を見ても現れている。パナソニックでは2016年3月期(2015年度)第3四半期決算で、太陽光発電システムなどを扱うエコソリューション分野の売上高が前年同期比3%減となった。さらに住宅関連事業や国内市況の悪化影響を受ける太陽光発電システムの減販影響が大きく556億円(27%減)と大幅減益となったとしている(関連記事)。シャープも太陽電池モジュールの販売減により、同分野を含むエネルギーソリューションが前年同期比42.4%減となっている。京セラもソーラーエネルギー事業の原価低減効果により利益率は高まっているものの、第3四半期の同分野の売上高は減少したとしている。三菱電機も太陽電池システム事業は住宅用はほぼ前年並み、メガソーラーは半減したという(関連記事)。

 これらの状況の中、太陽光発電関連事業者も単純にパネルを販売するだけのビジネスモデルでは難しくなってきている。各社が方針転換を余議なくされる中で、新たに期待をかける領域が「住宅向け」と「O&Mなども含むソリューション提案」である。「PV EXPO 2016」(2016年3月2〜4日、東京ビッグサイト)では、各社が自社の特徴を生かしつつこれらの取り組みを強化する様子が見られた。

HEMSに注力するパナソニック

 パナソニックは、「PV EXPO 2016」において、HIT太陽電池や独自工法の「PS工法」などをアピールする一方で、ブースの多くの面積を割いて「HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)」のアピールを行った。2012年からスマートHEMSとして展開する創畜連携システムや、家電を自動でコントロールして節電を行える制御装置「AiSEG(アイセグ)」、住宅分電盤をHEMS対応にできる「スマートコスモ」などを出展(図1)。HEMSとの連携により「電気の“見せる化”」を進めるスマートフォンアプリなどを紹介した。

photo 図1 パナソニックが出展したHEMS対応住宅分電盤「スマートコスモ(AiSEG通信型)」

 HEMSは家庭の電力消費の情報を取得しなければならないが、その情報の取得先として有力視されているのが分電盤である。パナソニックは国内において住宅用分電盤でトップシェアを確保しており、HEMS市場の創出が進めば、優位なポジションを確保できることになる。そのため、さまざまなプロモーション活動を通じて、HEMSの価値を訴えていく方針だ(関連記事)。

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