2000年に始まった電力の小売自由化が16年を経過して軌道に乗ってきた。企業向けに販売する新電力のシェアが2015年度に入ってから急上昇して8%台に達した。まもなく自由化が始まる家庭向けでも新規参入組の躍進が目立つ。ただし適正な営業活動の徹底や電源構成の開示などに課題が残る。
電力会社10社による市場の寡占状態が崩れてきた。資源エネルギー庁の電力調査統計によると、2016年1月の全国の販売電力量のうち、すでに自由化の対象になっている企業・自治体向けで新電力のシェアが8.9%に達した。1年前の5.8%から3ポイント以上も上昇したことになる。2016年内に10%を超える可能性も出てきた。
特に新年度が始まった2015年4月から新電力のシェアが急速に伸びた(図1)。企業や自治体の多くが年度の変わり目に電力会社から新電力へ契約を切り替えた状況が見てとれる。実際に電力を販売した事業者数も増え続けて、2015年10月に100社を突破した。さらに2016年1月には118社まで増加している。
これから自由化が始まる家庭向けの市場でも、新電力(2016年4月から「小売電気事業者」)の攻勢にはずみがついている。東京電力の管内で先行する東京ガスは3月14日までに11万8000件の申し込みを獲得した(図2)。2月1日に電気料金を値下げしてから申込件数が急増して、3月に入って獲得ペースが加速している状態だ。
一方では小売電気事業者の営業活動に早くも不適切な行為が数多く見られる。適正な取引を推進する電力取引監視等委員会の相談窓口には、2月だけで151件の電話やメールが寄せられた。その中には、「スマートメーターを取り付けると電気料金が半額になる」といった不当な勧誘を受けたケースもあった。
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