玄界灘の風で大型の風車を回す、九州電力グループが風力発電計画に着手自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2016年03月22日 13時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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近くにある島で「レンズ風車」が稼働中

 「唐津・鎮西ウィンドファーム」は地元の唐津市が推進する再生可能エネルギーの導入拡大計画に沿ったものである。唐津市では2013年に「唐津市再生可能エネルギー総合計画」を策定して、太陽光・風力・海洋エネルギーを中心に発電設備の誘致に取り組んできた(図4)。

図4 唐津市の再生可能エネルギー展開イメージ(画像をクリックすると方策も表示)。出典:唐津市企画部

 先進的なプロジェクトも始まっている。新たに風力発電所を建設する場所から1キロメートルほどの沖合では、神集島(かしわじま)という小さな島で「レンズ風車」が2013年から稼働を続けている(図5)。九州大学発のベンチャー企業が開発した小型の風力発電設備で、風を集めるレンズの働きで出力が2〜3倍に増強する。神集島に設置したレンズ風車は発電能力が3kW(キロワット)である。

図5 神集島の「レンズ風車」。出典:リアムウインド

 唐津市の西側にある海沿いの山の上では、大阪ガスグループのガスアンドパワーが「肥前風力発電所」と「肥前南風力発電所」を運転中だ。2カ所を合わせて20基の風車で合計30MWの発電能力がある(図6)。この場所も海から近いため、玄界灘の風を受けて大量の電力を供給することができる。

図6 「肥前風力発電所」の風車。出典:ガスアンドパワー

 九州では太陽光発電と風力発電が拡大した結果、地域によっては発電設備の接続がむずかしい場所も出始めた。今のところ唐津市は問題ないが、西側に隣接する長崎県の北部では風力発電設備に電圧変動対策装置を導入しないと送電網に接続できない可能性が高くなっている(図7)。電圧変動対策装置の導入コストは6億円以上もかかり、発電事業者の負担は大きい。

図7 風力発電設備の接続に制限が生じる可能性のある地域(2016年1月末時点)。出典:九州電力

 福岡県から佐賀県・長崎県にかけて、玄界灘の風を受ける九州の北西部には風力発電に適した場所が多い。今後は送電網の容量に余裕のある地域で風力発電が拡大していく見通しだ。

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