北海道で再生可能エネルギーから水素を製造する試みが広がってきた。家畜のふん尿で作ったバイオガスを利用するプロジェクトのほか、風力や小水力の電力でも水素を作ってエネルギー源に生かす。道内で余った電力は水素に転換して首都圏などに供給する。太陽光や地熱発電の取り組みも活発だ。
太陽光からバイオマスまで再生可能エネルギーが豊富にある北海道の大きな課題は、発電した電力に見合うだけの需要が近隣地域に存在しないことである。特に再生可能エネルギーが多い東部には十分な送電ネットワークが整備されてないため、発電した電力を他の地域に送る容量も限られている。その点から期待の高まる解決策が水素サプライチェーンの展開だ。
再生可能エネルギーで作った電力が大量に余っても、水素に転換すれば遠隔地まで運んで燃料に利用することができる。すでに道内の3つの地域で水素サプライチェーンの実証プロジェクトが始まった。水素の製造から輸送・利用までの一大ネットワークを北海道内に形成していく(図1)。
1つ目の場所は北海道のほぼ真ん中に位置する鹿追町(しかおいちょう)である。山に囲まれた高原の町では約2万頭にのぼる乳牛を飼育している。乳牛から毎日大量に発生するふん尿は町営の「環境保全センター」に集めて処理する(図2)。1日あたりの処理量は130トンにのぼる。
このセンターの中には、ふん尿を発酵させてバイオガスを生成するプラントがある。2種類の発酵槽を使って生成したバイオガスは発電機の付いた燃焼装置に送って、電力・温水・蒸気をセンター内の各施設に供給している(図3)。
発電機の能力は200kW(キロワット)で、1日に4000kWh(キロワット時)の電力を供給することができる。一般家庭の使用量(1日あたり10kWh)に換算すると400世帯分に相当する。
ただしバイオガスは1日に3900立方メートルも発生するため、発電で使い切れない余剰分は燃やして処理している。バイオガスの主成分はメタンガス(CH4)で、水素(H2)を作ることが可能だ。このバイオガスプラントに水素の製造装置を導入するプロジェクトが始まっている。
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